富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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87:『団地の見究』 15:03
「大団地展」チラシチラシ(クリックすると読める程度に拡大可)

上に挙げたチラシですが,一昨年,私が行きそびれた展覧会『大団地展 ── 高蔵寺ニュータウン再発見 ──  』(主催/財団法人かすがい市民文化財団,後援/愛知県春日井市教育委員会)です。
私は「公団がユニークな展覧会をするものだ!」と勘違いしていました・・・この本を手にするまで。
チラシに「住宅都市整公団 カモ」(鴨は当時の公団キャラクター)と書かれているのを「住宅・都市整備公団」と読んだのでした(本家の「住宅・都市整備公団」とは,現在の「都市再生機構」)。

「団地の見極」(表紙「団地の見極」(本文

観損ねた『大団地展』の,ベースとなった団地考現学が,本書『団地の見究』。
著者も同じデザイナー・ユニット「住宅都市整公団」(大山 顕,長野 修一)による「1997年から10年にわたり『見究(けんきゅう)』してきた高層団地たちの一部を紹介」した本。只だ只だ,彼らの撮った48団地(都営等もあり公団だけではない)の写真と,一見,学術的な分析レポートを真面目に味わう社会学の本です。

民間の分譲マンション(三菱地所や三井不動産などの)と違い,供給サイドの視点で作られた無機質なのが「公営団地」の志向で,まさに「只の大きな箱」のイメージです。
しかし本書の「FORM:フォルムに注目すべき団地」「TEXTURE:テクスチャに注目すべき団地」「COLOR:カラーに注目すべき団地」の分類に沿って観ていくと,実はひとつひとつ味があったことが判ります。この見極力を公開した,真面目に楽しい「なんじゃこりゃ」写真集です。
帯にあるように「あなたの好みの団地がきっとみつかる!」には,どうしても至りませんでしたが・・・。


『団地の見究』(大山 顕,東京書籍,2008年)1900円
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65:『デザインにひそむ〈美しさ〉の法則』 16:20
デザインにひそむ〈美しさ〉の法則
タイトルから専門的な本かな? と思っていたのですが,「読者のみなさんは『工業デザイン』という言葉に,どんなイメージをお持ちでしょうか?」(p.5)という語りからも,本書は広く一般向けに書かれたものです。
デザインの認識を拡げるためにも,中学生層にも読んで欲しい内容でした。

タイトルの『デザインにひそむ〈美しさ〉の法則』は,第1章「身近にひそむ美しい比率」から来ています。当初は黄金比や白銀比(√2矩形)の話題,しかし,全編を通してみると,決して造形的な形態論だけの内容ではありません。
作者・木全 賢氏は1959年生まれ(私と同世代)で,元シャープのデザイナー。
「工業デザイナーは日々こんなことを考えながらデザインしているのだと理解していただければさいわいです」(p.166)とのメッセージに沿って,家電やパソコン等を例にとっての(1)形態面での思考,(2)マーケティング面でのデザイナーの思考が窺えます。

デザインにひそむ〈美しさ〉の法則(本文)
デザインの「人と機械が接する部分(マン=マシンインターフェース)」(p.75)の志向性,造形的には「稜線処理」や「面取り」の生み出し方のプロセス公開など,工業デザインを学んでいる大学生にも読み応えがあるでしょう。
参考文献を読んで欲しい,という意図で,デザインに関する一般向けの文献リストがキチンと巻末に載っています。
「7±2(または4±1)の法則」(p.80),「80対20の法則」(p.152),「バリアフリーとユニバーサルデザインの違い」(p.152)などは,私も再認識することができた事柄でした。

『デザインにひそむ〈美しさ〉の法則』(木全 賢,ソフトバンク新書,2006年)700円
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64:『Balance in Design ── 美しくみせるデザインの原則』 14:30
美しくみせるデザインの法則(表紙)

ものをつくる際,その形態には何らかの秩序を持っていたいと考えます。
線や面を形づくる「依り所」は,フィーリング任せの曖昧さを排しない限り,秩序は得られません。世のデザイナーは,古代ギリシアの時代から,この認識に基づくプロポーションを解析してきました。
人間の成すものに限らず,自然界の時点で,造形の秩序化は存在もしています。

前回紹介のコルビュジエ(ブログNo.63『ル・コルビュジエの勇気ある住宅』)は,建築デザインに人体のプロポーションに基づく設計理念(数理に基づく秩序)を研究し実践した建築家です。

美しくみせるデザインの原則(ダ・ヴィンチ)美しくみせるデザインの原則(椅子)
 
今回の『Balance in Design ―― 美しくみせるデザインの法則』では,近世の絵画や現代の工業デザインの世界にも,作家によって意識された造形の秩序学が潜んでいることを教えてくれます。また,自然界の造形についての法則を探究し,豊富な図版で解説しています。
デザイン学の中では「数理造形」とか「モデュール・システム」などと呼ばれている分野です。この類の書籍は,場合によっては数学の領域にも入り,難し過ぎることもあります。しかし本書は,書店では美術書コーナーにで見つけたこともあり,数学・数学していない点がうれしいところです。
表紙はご覧のように厳めしいのですが,解説に用いられている写真は,ポスターや椅子,家電や車などで構成されていますので,とっつきやすいです。


『Balance in Design ── 美しくみせるデザインの原則』
(Kimberly Elam/著,伊達尚美/訳,P・N・S出版,2006年)1800円
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63:『ル・コルビュジエの勇気ある住宅』 16:04
ル・コルビュジエの勇気ある住宅(表紙
ル・コルビュジエの勇気ある住宅(本文
生誕120年ということもあってか,今年はちょっとしたル・コルビュジエ(1887〜1967年)の静かなブームです。日本では,これまで一般的にはあまり知られていませんでしたが,建築界では,近代建築家の祖といわれている人物です。コンクリートを建築構法(柱と床をコンクリートでの支持構造とする。ドミノ・システムと呼ばれる)に定着させた人物で,「住宅は住むための機械」というフレーズはデザイン史の上でも有名です。

若い頃に,ル・コルビュジエ建築の魅力に惹かれた建築家・安藤忠雄氏を案内役に,コルビュジエ建築の魅力を紹介した本です。
安藤氏は,東大の教授(1997〜2003年)に迎えられた時,研究室の学生たちがコルビュジエの住宅の模型づくりに励んだことは,他の本にも紹介されています。学生たちと「住宅のル・コルビュジエ」展を開いたのは2001年のことです。この本も,そのいきさつから始まっています。
一見,コルビュジエ建築の解説本ですが,同時に安藤氏の設計建築を挙げ,そのコルビュジエ住宅からの影響も語っています。「私の中のル・コルビュジエ」(p.28〜91)をテーマとした安藤氏の思考の背景が読み取れ
ます。

コルビュジエといえば,コンクリート構法の開発・設計と同時に,建築の設計基準となる寸法体系(モデュロールと呼ばれる)を研究・開発したことでも知られています。
私は,このモデュール理論の方からコルビュジエに興味を持ちました。具体的な建築の足跡を知るようになったのは,遅蒔きながら,コルビュジエ建築が紹介され出すようになった10年ほど前のことです。
この本は,写真も豊富で美しく,安藤氏の解説も専門・専門しておらず,建築家の通史としても最適です。先回の『ディック・ブルーナのデザイン』(ブログNo.60)と同様,新潮社・とんぼの本シリーズです。

『ル・コルビュジエの勇気ある住宅』(安藤忠雄,新潮社,2004年)1400円
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53:『つくる図書館をつくる ── 伊東豊雄と多摩美術大学の実験』 12:57
多摩美図書館(表紙2)
多摩美図書館(本文
大学図書館という「機能」を考えるプロセスを,多摩美術大学での設計・施工を通して具現化したプロジェクトのコンセプトブックです。
多摩美術大学図書館は2007年春に完成したばかり。設計監理は建築家・伊東豊雄氏で,このほかに各分野のプロフェッショナルが参画しています。
難しそ〜な建築論ではなく,アイデアスケッチの段階からプレゼンテーション光景,工事現場の工程写真,また各界からの「図書館」をテーマにした評論で織りなされています。これも建築関連書籍の例外に漏れず,見事な誌面デザインで構成されています。対象となっている「図書館」のみならず,この本自体も一つの作品としての格式があります。
工事現場を支える方々のスナップ写真もプロフィール入りで載っています。使われている市販の家具たちも紹介されています。これらは,本全体のイメージを構築する上でもうれしい編集です。

前回は『企画力
── ビジネス・プロデューサーになる50の方法』を紹介しましたが,今回の本は,実際のプロジェクトというものが,どのように進行されていくのかを,具体的かつ視覚的に伝えてくれるものです。少〜し価格も高いのですが,文字だけの新書判より,私は図版が豊富で誌面構成も行き届いた本の方が楽しくワクワクしてきます。但し,新書判のように,ペンで書き込みをすることができません。誌面が美しすぎて。

『つくる図書館をつくる ── 伊東豊雄と多摩美術大学の実験』
(鈴木 明・港 千尋/編,多摩美術大学図書館プロジェクト,鹿島出版会,2007年)2500円
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51:『F.O.B HOMES BOOK』 16:55
F.O.B  BOOKS(表紙)
F.O.B  BOOKS(本文)
帯にくっきりと印刷された見出し「家のつくり方を,つくりました」
この一言が,本書を購入した動機です。
タイトルにあるF.O.Bとは,もともとは生活提案の雑貨を扱う会社で,名古屋ではお洒落なカフェと雑貨店がLOFTの斜向に展開されています。本書は
このお洒落な雑貨店が提案する住宅コンセプト集で,これまでの「作品」19住宅が紹介されています。いずれもn-LDK(これは住宅公団の設計思想に起源する)発想を外したプロトタイプ(雛形)を基本に,キーワード発想(例えば「ディスプレイされる生活」「揺らぐ用途」…)で設計されています。解説では,これを「ハウスメーカーの提供する『商品』,建築家の手による『作品』のちょうど真ん中」(p.11の要約)に位置付けています。
見えないニーズを形にするプロセスと成果の醍醐味は,やはり建築がその雄だと私は思っています(広告キャンペーンは数週間で,その役目を終えるのに対し,建築は人間の未来生活へと続くものですから)。

建築の中でも,個人住宅という規模の小さなプロジェクト群ですが,見えなかったニーズを具現化する思考プロセスを視覚的に追える本です。
総じて建築関係の本は誌面が美しく,造本にも気を使ったものが多いのですが,本書も端正なデザインで見事に構築されています。
この本をF.O.Bの「商品カタログ」と捉えるならば,賑やかさを競ったハウスメーカーと較べると静的ですが,このテーストを理解する人を顧客とする「住宅」でもあるからでしょう。


『F.O.B HOMES BOOK』(INAX出版,2006年)2500円

F.O.B COOP 公式サイト:http://www.fobcoop.co.jp/
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