富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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127:『銀座ママ麗子のマーケティング事件簿』 12:14

127「銀座ママ麗子のマーケティング事件簿」
作者の高橋 朗氏の「学術的でない方法でマーケティングを解説するための本を出版することにしました」の通り,小説仕立てのマーケティング教本です。

業界第一位の化粧品メーカー美粧堂が男性向スタイリング剤として,20年以上トップシェアを誇ってきたのが「シルキー」,陳腐化する筈はないと思われていたのですが・・・。
二番手オリオン化粧品の新商品「ダンディ」に脅威を感じるまでに。美粧堂は伝統商品をライバル「ダンディ」寄りにリニューアル,老舗が二番煎じ戦略を採ってしまったところから,この物語は始まります。
「ダンディ」の快進撃と裏腹に,「シルキー」不振は,とうとうコンビニ最王手セブン・トエゥルブの棚から消えかけるまでに迫ります。シルキー・リベンジ・プロジェクトの奮闘記です。

主な登場人物は,美粧堂の商品担当者,美粧堂をクライアントとする広告代理店・芸通の面々,それと書名でもある銀座の美人ママ麗子です。なんでも外資系コンサルタント会社に勤務していた人物らしい。
広告代理店の若手マーケッター森崎の「〜じゃないですか?」「マジっすか!」発言,銀座ママ麗子の「〜でございますわよ」など,妙にTVドラマの演出風ですが、中身は真剣な「シルキー」蘇生の企画舞台裏が描かれています。TV番組を観る臨場感で読み進めることができました。

「モノじゃなくて,コトの時代」「コンセプト(存在意義)」とか「サスティナビリティ(持続可能性)」だとか一見難しそうなコトバが出てきます。しかし「気に入らないんだよ。そういう理屈ばっかりで話されてもよ。人間はロジックじゃ動かんぜ。人間は,感情で動く動物だ。理屈ばかり言ってるヤツは,学校でお勉強でもしてな」(p.111-112)芸通・クリエーター関口の会議ブッ飛び発言も入ったりと,舞台裏は何かと賑やかです。

じり貧の「シルキー」の復活の行方は? このリベンジ企画での麗子ママの役割どころは・・・?
本書の最後30ページ余りで,話は意外な展開に! このプロジェクトの行方は・・・。

登場する会社は架空ながら,こりゃ資生堂,電通,ボストンコンサルティンググループ,セブンイレブンのこと!? 麗子ママが復活に導いた缶コーヒーって「BOSS」の設定!?
架空ばかりでなく,作者が実際に顧問を務めるリサーチ会社・マインドシェア社(プロフィールより)が,何と企画の重要な役割でさりげなくPR登場(監督がチョイ役ながら旨く登場するように)するあたりは,気付く読者だけが頷く演出!


『銀座ママ麗子のマーケティング事件簿』(高橋 朗,宝島社新書,2008年)720円

 

 

[追伸]
この本から,次のようなマーケティング鉄則の判り易いフレーズを収穫しました。
「多くの場合はターゲット自身も,自分が本当は何が一番欲しいのかを自覚していないのよ。(中略)ターゲット自身が気づいていない,無意識下の願望を想像してあげて,それを実現してあげるの。ちょうど,誰かから思わぬプレゼントをもらった場合に一番うれしいのと同じね」(p.75)とは,麗子ママから新人ホステス香織への教え。

 

 

上記のマーケティング鉄則についての各書籍での記述例は『マーケティング大進化論』(blog.119)の「追伸」に列挙しています。
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