富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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119:『マーケティング大進化論』 13:15
119『マーケティング大進化論」
ちょうど1年ほど前に買った本で,進んだり戻ったりしながら読み終えたのが,この『マーケティング大進化論』です。しかし分厚くて難解な本ではありません。読むほどにマーケティング理論のキーワード・キーフレーズが収集できる宝庫だったからです。
例えば ──
 「商品が売れない理由の一つは『売れるもの』ではなく『売りたいもの』を作っているため」(p.58),
 「どんなに品質が高くても,知られていない商品を売るのは難しい」(p.62),
 「戦う土俵を変える」「敵がいないマーケットで戦う」(p.67-68),
 「アイデアが優れているからといって,企画が通るとは限らない」(p.84),
 「お客は理屈では商品を買わない」(p.140),

これらのマーケティング概念は,いろんな本の中で違った言い回しがされています。しかし,こうこうこういう概念を作者は,こういうコトバに置き換えて表現するんだな! と,読者が膝を打ちたくなる判りやすい語彙が鏤められています。

広告的な考え方として,作者の牧野 真氏も「商品特徴や使い方などを小学生の子どもでもわかるように,やさしい言葉に置き換えることが必要です」(p.100)という自らの教えを,すでに本書の中で実践しているのです。
「わかりやすい言い回しに変えることは,面倒な作業」(p.100)ですが,読者として,ことマーケティングに関しては,この本から素敵な言い回しを貰いました。

さらに,次の文章は誰しも唸るのではないでしょうか!
「マグドナルドのハンバーガーよりもおいしいハンバーガーは簡単に作れても,マグドナルドよりも儲かるバーガーショップのビジネスモデルを作るのは,至難の業です」(p.103)。

この本,実は前回の『市場調査「集中講座」』(blog No.118 2009 1/19)と同じ作者です。
前回がプランニングに繋がる市場調査の話でしたので,プランニングの発想着眼が書かれた今回の『マーケティング大進化論』は続編という位置づけです(出版年は,今回分の方が古く,出版社も異なりますが・・・)。

『マーケティング大進化論』(牧野 真,中経出版,2006年)1500円
[長〜い追伸]
自分がモヤモヤと考えているが論理的な文章になっていない内容について,他者が既に文脈に著しているのを発見すると「当たった」という感じになります。同じ状況に「私はひそかに膝を打った」と表現した本を読んだことがあります。思考をメタ化できる素材が揃うのです。それらを複数の書籍で発見できることもあります。この辺については,以前『読む技法・書く技法』の紹介(blog No.47)時にも記載しています。

例えば,本書からでしたら ── 
●「『私はこう考えますが,いかがでしょうか?』という質問には答えることができますが,『これからはどんなビジネスが有望ですか?』といったものには明解な回答が出せません。なぜなら,その質問には『仮説』がないからです」(p.122)

上記が,他の本では ── 
●「需要というものは常に見える状態にあるわけではない。また需要というものは,その時点で消費者や商品を購入する人々の心の中に明確に現れているとも限らない。新しい商品を見たり,手にしたときにはじめて触発されて,これが欲しかったのだというように人々が気付く場合もある」(小林久徳『商品開発の本質』理工評論社,2003年,p.34)。

●「『いま,ほしいものを教えてください』と聞き,『牛乳が飲みたい』『ところてん食べたい』と言われたところで『ところてん牛乳』を創っても,ヒットしないというコトだ。『こんなタイプの新しいところてんを考えているんだけど,どうですか?』と聞いてはじめて企画をブラッシュアップさせられる」(古館プロジェクト『企画術の教科書』インデックスコミュニケーションズ,2007年,p.116)。

●「消費者が本当に望んでいるものは消費者に訊いてみてもわからない。(中略)消費者は新しい製品に肯定的な評価を下したのだ」(奥出直人『デザイン思考の道具学』2007年,p.35)。

●「世論調査をいくらやっても,博物館を作れというニーズなんか出てきません。だけど作れば,喜んで利用する。需要が供給を呼ぶのではなく,供給が需要を呼び起こすんです。新しいものはすべてそうです」(梅棹忠夫「現代の博物館は『博情報館』コンピュータが支えるメディア」『パソコンと私』矢野直明/編,1991年,p.23)。
── と,ま,こういう具合です。
もう一つの読書の楽しみです。

[その後の追伸]
その後読んだ『銀座ママ麗子のマーケティング事件簿』では,麗子ママが「多くの場合はターゲット自身も,自分が本当は何が一番欲しいのかを自覚していないのよ。(中略)ターゲット自身が気づいていない,無意識下の願望を想像してあげて,それを実現してあげるの。ちょうど,誰かから思わぬプレゼントをもらった場合に一番うれしいのと同じね」(p.75)と。
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