富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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115:『商店街再生計画 ── 大学とのコラボでよみがえれ!』 17:26
115「商店街再生計画」
大学改革を硬〜く真面目に説いた本は,これまでも
『これまでの大学 これからの大学』(blog No.76など取り上げてきました。
そこでは「公開講座」のような片手間のサービスを「ビジネスとして」本格的に取り組んでいく模索が,これからの大学の方向性だろう! といった現実的レヴェルでの問題解決策でしたが・・・。

今回の『商店街再生計画 ── 大学とのコラボでよみがえれ!』は,かなり空想的! 
しかし魅力的な方策が詰まった絵本仕立ての本です。
かつて若者向けマーケティングの教科書的存在だった雑誌『アクロス』(西武パルコの情報誌)の編集長だった三浦 展氏と,画期的な団地再生計画等で著名な建築家集団「みかんぐみ」を主宰する曽我部昌史 神奈川大学建築学科教授とゼミ学生たちによる共著。

話は,バブル経済時代に東京郊外に移転した平成東京大学(架空)の教授会から始まります(p.6〜10)。
理事長「やっぱり,都心に戻ったほうがいいね」
学長「いったいどこに戻るんですか? 新しく土地を買って校舎を建てる金はあるんですか?」
理事長「ないねえ。そこが問題だ」
理事長はため息をついた。論議は1年間続いた。
建築学科ガソベ教授「今度,東京都内の○○町の商店街の活性化策を考える仕事をするんですよ」「商店街を大学にするんです」
理事長「それだよ,それ。(中略)古い商店とかオフィスビルとか,ガラガラだ。そこに建築学科だけじゃなくて,大学を全部入れてしまえばいいんだ!」
という訳で,3年後,ついに平成東京大学は初期投資なしで都心の商店街に移転。

以上が本書のプロローグ。
そして大学はどうなったのか? そして商店街はどうなったか? 
この架空の事例が[PART 1](p.11〜96)として絵解きで紹介されています。古びた映画館は講堂に,体験学習は日常,料亭ではマナー教室,蔵はギャラリー化,商店街の催事は大学祭,定食屋は学食・・・と,コラボレーションのファンタジーが満載。
書名からは,商店街へ向けた改革ですが,画期的な大学改革案と見ても唸る企画集です。現状では大学設置基準等の制約で実現は限りなくゼロに近い企画ですが,真面目に検討されてもおかしくない。

115「商店街再生計画」(キャンパス)115「商店街再生計画」(商店街)
左:架空の平成東京大学「商店街キャンパス」マップ 右:店舗の2階はゼミ室

[PART 2](p.97〜123)では,「商店街キャンパス計画」ほどの画期性はありませんが,現実に各地で始まっている大学とのコラボレーションの事例紹介となっています。「これを,ひとつの大学とひとつの商店街でおこなわれたとしたらどうなるか」(p.124)の構想が,実は[PART 1]に繋がっているのです。

本書は次のように締めくくられています。「商店街が壊滅し,大学も機能しないとなると,いったい子どもを社会化する機能は誰が(どこが)受け持つのか。(中略)であれば,商店街と大学をくっつけてみたらどうかというのが本書の発想の原点です。これは荒唐無稽な発想でしょうか?」(p.125)と。

『商店街再生計画 ── 大学とのコラボでよみがえれ!』
(三浦 展 + 神奈川大学 曽我部昌史研究室,洋泉社,2008年)1500円
[追伸]
「商店街キャンパス計画」なんて,正攻法的な発想からは発見できない着眼で,魅力的!
新規の商業施設と供に大学キャンパスを作った例はあります。1986年,ショッピングセンター「つかしん」に隣接してデザインされた大手前女子短大(現・大手前大学 いたみ稲野キャンパス)のケース。しかし,これは新規事業であり「再生計画」ではありません。本書での「商店街キャンパス計画」は,町中の「シャッター通り」商店街が舞台であるのがポイントです。計画された近代的なキャンパス・スタイルにも憧れますが,空き店舗の2階が研究室という風情にはもっと憧れます(写真参照)。

普段行かない書店では,予期せぬ本を発見する率が高いのですが,今回はヴィレッジ.ヴァンガード(JR名古屋駅西ビッグカメラ6F)での発掘でした。
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