富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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101:『ポール・ランド,デザインの授業』 12:53
「ポール・ランド,デザインの授業」(表紙
行きつけではない書店に立ち寄ると,意外で興味深い書籍に出くわすものです。今回は,丸善・名古屋栄店で購入した『ポール・ランド,デザインの授業』です。

あの印象的な「IBM」社のシンボルマーク(1956年制作)の制作者こそ,ポール・ランド氏(1914〜1996年)です。晩年では,Macintoshを追われた後にスティーブ・ジョブスが興した「NeXT」社のシンボルマーク(1993年制作)など,長年にわたって活躍し続けたデザイナーで,教育者でした。
その昔「IBM」は,優れた商品を開発・生産していたにも関わらず,コミュニケーション活動が下手で,優れた商品群をアピールできないでいました。この問題を解決したのが,デザイン最高顧問に迎えられたポール・ランド氏でした。氏は商品から工場環境まで一貫したデザインシステムの発信を図り,IBMは世界的企業へと発展を遂げました。
これが今日の「CI(Corporate Identification)デザイン」の基本となった思考であり,ポール・ランド氏は,その開祖です。

「ポール・ランド,デザインの授業」(本文・赤
この本は,1995年に行われたアリゾナ州立大学でのワークショップの記録がベースになっており,マイケル・クローガー(Michael Kroeger)氏によって編まれたものです。ポール・ランド氏の最晩年のデザイン哲学・デザイン教育論です。この日本語版は出版されたばかり。
主な構成は,[対話1]として「教授陣との講演打合せの内容」,そして[対話2]の「講演での学生との対話」から成ります。講演記録を編集したものですから,そんなにボリュームのある本ではありませんが,故に含蓄のあるキーフレーズの連続です。

学生に「デザインとは関係のしくみである」と説いています。
この意味合いは,直截に本書のポール.ランドの言葉から辿ってください。軽装本ながら,造本も美しく,デザインを学んでいる人なら,きっと手元に置いておきたくなる本です。本文組は,特色の紺と赤だけで印刷されています。


「ポール・ランド,デザインの授業」(本文・紺
『ポール・ランド,デザインの授業』(マイケル・クローガー,BNN新社,2008年)1400円
[追伸]
ポール・ランド氏の「デザインは不運な言葉だと思う」という発言から,アメリカでも『デザイン」という言葉が狭義的に解釈されているのを認識できました。
「デザインとはネクタイの柄や,浴室の壁紙,カーペットの模様に見られるものだと考える者もいる。それが,デザインの一般的な認識なんだよ。そうしたものもデザインの過程の一部ではあるが,それらはたんなる装飾にすぎない。これがほとんどの人が定義するデザインであり,素人のデザインの定義だ」(p.42)。大昔ではなく,1995年での発言です。
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