富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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73:『ニッポンの大学』 18:01
ニッポンの大学
今どきの大学をテーマとして,先頃,話題となった『最高学府はバカだらけ』(blog No.62)が週刊誌的な内容だとしたら,こちら『ニッポンの大学』はビジネス誌的な位置づけです。
大学評価といえば受験産業がはじき出した受験難易度を測る偏差値があまりにも有名ですが,この本では,約90項目の「ものさし」が満載。これらは,しっかりとした出典明記のデータ(一つだけ筆者による唯一主観的とことわりのあるのが「美しいキャンパス・ランキング/p.243)をベースに,その解説というかたちで綴っています。
入試の偏差値が幅を効かしてきた中で,こういう多面的な評価が「新書判」で出版されることは時代の流れでしょう。

ニッポンの大学(帯)硬いだけでは読む気がしないのが,大学をテーマにした本ではないでしょうか。
ところが,本書は「就職支援の 担当職員数」(p.85)といった真面目な論述が多くを占めながらも,中には「ファッション誌登場の女子大生数」(p.69),「非喫煙率」 (p.55),「テレビ・映画のロケ地」(p.243)などもあります。ミスコン入賞者で学校名が出るのを嫌がる大学,逆に,大学の宣伝に利用するところあり,の状況に対しては「素敵な先輩がいることが,社会に対して大学の魅力を訴える力になる」(p.73)と,頭の硬い大学人に意識改革をも促していま す。

私の勤務校である愛知教育大学は,名古屋ローカル故に,この類の本には殆ど相手にされません。ところが,今回は,何と本の帯(腰巻き)にクイズで登場(右写真)しているではありませんか! 「小学校の教員採用数の一番多い大学は?」です。


『ニッポンの大学』(小林哲夫,講談社現代新書,2007年)740円


[追伸]
ニッポンの大学(教員採用数)上記のクイズの答えは右写真(本書p.100)です。

他にも本書では受験生パンフレットのOG紹介の分析から「OGに女子アナがいることは自慢になる」とする大学も導いています(作者は紹介していませんでしたが,確かに,国際基督教大学のパンフレットには卒業生でNHKの住吉美紀アナウンサーが登場していました)。

[追伸2]
本書での大学記述に関し講談社のWeb上で「訂正とお詫び」が載っていました(2010.09)
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