富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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71:『SAMURAI 佐藤可士和のつくり方』 16:27
佐藤可士和のつくり方(表紙)

以前に紹介の『佐藤可士和の超整理術』(blog No.68)は,アートディレクター佐藤可士和氏の企業のコミュニケーションデザインへの思考回路を公開したものでした。
こちら『SAMURAI 佐藤可士和のつくり方』は,SAMURAI(佐藤氏の主宰する事務所)の仕事をマネージャーの観点から描いたもの。ハードカヴァー本として,角背の美しい造本です。
アートディレクターという仕事の中身を,業界だけではなく一般の人にも理解してもらいたい,という思いで綴られています。ストーリーの柱としては,(1)アートディレクターという職種の紹介,(2)佐藤可士和氏のアートディレクターとしてのデザイン紹介,(3)オフィス空間環境への思い,から成ります。

佐藤可士和のつくり方(明治学院佐藤可士和の作り方(本文)左:明治学院大学のUI,右:オフィス空間を「作品」として公開

作者の佐藤悦子氏は「企業やブランド,商品といったデザインの対象物が持つ本質を掴み,課題を明確化して,コンセプトメイキングから最終アウトプットまで,プロジェクト全体を統括する。クライアントとコミュニケーションを重ね,問題を解決する糸口を見つけ出し,最後に形にするところまで責任をもって見届けるという取組み方」(p.20)とアートディレクターの職業を解説してくれています。また「コミュニケーション・コンサルタント」として問題解決のアプローチ方法として「商品の開発からパッケージデザイン,売り方やPRの戦略まで,すべてに関してトータルにディレクション」(p.22)まで発展する仕事であるとも述べています。

後半の誌面の多くを占めるのがオフィス空間環境の話題。「サムライにとって,オフィスは単なる仕事場ではなく,作品のひとつだと思っています」(p.158)と宣言し,オフィス写真も作品と同等に掲載し「空間が伝える思想」(p.167)としてのメンタル面の環境論には興味深いものがあります。

後半の「クリエイター意識とのギャップ」の項では「ひとりの社会人として当然と思われるレベルのところでは”クリエイターだから何でも許される”といった勘違いはして欲しくない」(p.192)と,マネージャーを超えた配偶者ならではの佐藤可士和氏へのパンチもあります。しかし,これはクリエイター全般へ向けての辛辣なメッセージなのかもしれませんね。


『SAMURAI 佐藤可士和のつくり方』(佐藤悦子,誠文堂新光社,2007年)1800円
[追伸]
「アートディレクターという職業をメジャーにする」(p.193)一環として,一般へ向けて書かれた本です。ところが,話題の展覧会を見るために「ニューヨークからロンドンに移動して展示を見てから帰る」という表現が普通に文章に出てくるあたり,アートディレクターは庶民とは違う世界の人間というイメージを持ってしまいまうのは私だけでしょうか。
| デザイン思考・意匠 | - | - | posted by tomiyama - -
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