26:『放送禁止歌』 |
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1956年生まれの作者・森 達也氏は,民放TVディレクターとして,1995年5月に「放送禁止歌のドキュメンタリー」番組を実現。この本は「放送禁止の歌をどうやって放送するんだ?」(p.34)という番組制作への取材活動を綴った内容です。
番組自体は「深夜というよりも明け方といういうほうが正確なこんな時間帯,新聞の番組欄にタイトルすら満足に掲載されないドキュメンタリー番組」(p.12)で,しかも関東ローカルだったようです。
放送禁止歌 ―― それは反戦フォークの反体制に初まり,風刺,差別表現,性表現(但し「性表現に対しての規制は,時代の経過とともに緩められてきた」p.108)へと,「言葉狩りゲームが始まったかのように,規制はみるみる増幅していった」(p.24)。
昨日とりあげた「イムジン河」(5/21の『少年Mのイムジン河』)の記述もありました。ところが,放送禁止歌として有名な「イムジン河」は,森氏の取材によると「要注意歌謡曲一覧」には無かったことが判明,諸説はありますが,いわゆるメディア側の拡大解釈,自主規制ではなかったのか・・・と。
この本で取り上げられているのは,民法の自主規制の話が中心ですが,いろんな権力からの圧力を恐れての拡大解釈規制の一人歩きも,作者は危惧しています。
また「『要注意歌謡曲指定制度』は,放送禁止歌を決定するシステムだと長く思い込まれてきた。しかしその本質は,強制力や拘束力などまったくないガイドラインでしかないことが,取材を通して明白になった」「『要注意歌謡曲指定制度』は,1982年度版を最後に消滅していた,効力は5年間と表記されているから正確には1988年,・・・その機能を失っていた」(p.72)。
そういえば名古屋CBCラジオではAランク指定「金太の大冒険」(つぼいノリオ)が何度となく放送されています。聞き方によっては凄くエッチな曲ですが,これは見方によっては,地元ラジオDJも務める客論・坪井氏の表現の規制への挑戦なのかもしれませんね。
「タブーを生み出していたのは僕たち自身だった!」(本書の帯より/写真参照)。
『放送禁止歌』(森 達也,光文社「知恵の森文庫」,2003年)680円
[追伸]
本の中の記述で,とても凄いことが書かれています。
「明治憲法下で言論統制の根拠となった新聞紙法や出版法は,戦後は現行憲法の理念に沿わないとして廃止された。ところがラジオを前提として戦前に定められた電波法は,なぜかそのまま現行の電波法と放送法とに引き継がれ,戦後生まれのテレビを律している」(p.123)。
「テレビメディアにとっては,自らのアイデンティティを歪に規定する非常に重要な法規なのだが,これについての論議はほとんどないし,そんな危ういバランスの上に成り立っているという自覚も稀薄だ。……少なくともテレビの世界に10年以上棲息している僕は,この事実をつい最近まで知らなかった。知らずに番組を作ってきた」(p124)。
先ころ,ある捏造事件を背景に利用して,国による放送規制を強める動きはありますね〜。そして放送・広告界の方々が,その動きへの反対表明を出したのは,記憶に新しいことです。
本のカバーにある楽譜は,ある時期から放送禁止の烙印を押され,教科書の掲載からも消えてしまった「竹田の子守唄」の譜面。「不許可」の文字は,戦時中に検閲で掲載不可となった報道写真に押されていたスタンプからの再現のようです。
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