富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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190:『「捨てる!」技術』&『僕が読んだ面白い本・ダメな本 そして 僕の大量読書術.驚異の速読術』 19:10

「捨てる!」技術+

 

● 時期尚早だった『「捨てる!」技術』

大ブームとなった『断捨離』(やましたひでこ著)が2009年刊行ですから,この辰巳 渚『「捨てる!」技術』は,それよりずっ〜と前に提唱されています。

 

私の購入は17年前で,初版も同じく2000年です。作者も「完璧を目指さない」(p.110)とする緩やかな「『捨てる』作業によってモノの価値を検討する」(p.6)生活スタイルの提唱で,後発の「断捨離」ほどのインパクトと徹底さはありませんが,当時,噛み付いたのがジャーナリスト立花 隆氏でした。

 

1965年生まれの作者は当時35歳,当ベストセラーで知られるようになった新人です。巨匠・立花先生は,その後『僕が読んだ面白い本・ダメな本 そして 僕の大量読書術.驚異の速読術』なる超長〜いタイトルの単行本を出しますが,その中で「『「捨てる!」技術』を一刀両断する」と章建てまでしての徹底ぶり。何ともお疲れ様です。

現今,書店では「ミニマリスト」の生活スタイル関連がコーナー化されるほどですが,立花先生はどう見ているのでしょう,この潮流を・・・。

 

● 収納法ではモノは片づかない(辰巳,p.95)

生活スタイルの一つの提唱ですから,採り入れるか否かは,個々人の裁量です ──「私はこの本を全く評価しない,ほとんどカスみたいな本だと思っている。「捨てる技術」を使うなら,まっ先に捨ててしかるべき本だと思う」(立花,p.374)まで言い出す始末。巨匠ともある御仁,ここまで攻撃する〜!?

 

「女性が日用品について信奉したくなる『収納法』,男性が書類や資料について信奉したくなる『整理法』」(辰巳,p.85)── 確かに,確かに・・・。

当書を購入時,人一倍の蒐集癖があり「捨てる」発想が皆無だった私も,その後の「断捨離」教に少なからず影響を受け,今はモノを買わない生活を目指しています。17年を経た再読で「モノが多いから収納法・整理法が必要になるのだと考えよう。モノを減らせば方法論に頼るまでもまでもなくなってくるはずだ」(辰巳,p.92)のフレーズに強烈に共鳴する私。

整理術が載っている雑誌類には急に興味が無くなってしまった私。

極論でしょうが,そもそも家に収納スペースって必要なんだろうか? とも思うようになった私。

 

建築家・宮脇 檀の声を引用している次の箇所も興味深い ──「そういう部分(押入や納戸)をたくさんつくればよい設計だと喜ばれるのは経験上分かっています。けれど,いくらたくさん収納を作っても,そこは後から後から買い込まれるモノたちですぐに一杯になるだけだ,ということも私たちは同時に知っています」(宮脇 檀『男と女の家』)。

 

● 暮らし方を作り直す

今,改めて紐解きますと,当時は作者自身が若いので,そこまで達観していたかは分かりませんが,主張内容の哲学は「捨てる」技術にあった訳ではないように感じます。

「持っているモノはどんどん使おう。逆に、使わないモノは持つのをやめよう(辰巳,p.83)

「身のまわりにあるモノの山を『捨てる』ことか始めて,暮らし方を作り直す(辰巳,p.220)

「のんびり自分らしくくつろげる家に暮らしている人はどのくらいいるのか」(辰巳,p.221)

アッという間にアラ還(=間もなく還暦)となった今,暮らし,住宅,道具の在り方,シンプルな生活の良さを志向する考え方への余裕が私にも湧いて来ました(遅!)。

 

『「捨てる!」技術』(辰巳 渚,宝島社新書,2000年)680円(当時)

『僕が読んだ面白い本・ダメな本 そして 僕の大量読書術・驚異の速読術』(立花 隆,文藝春秋,2001年)1714円

 

[追伸]

『「捨てる!」技術』出版時はベストセラーとして話題になったのですが,その後「MOTTAINAI!」ブームが到来。「MOTTAINAI!」とは,環境分野でノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ女史が2005年に来日した際,感銘を受けた美しい日本語として「もったいない」を,環境保全の世界共通語に提唱したのが発端です。でも「MOTTAINAI!」も長くは続かなかったように思うのです。このコトバ「MOTTAINAI」を覚えている方,いるでしょうか?!

 

ところで,立花先生「この本を読んでいると,もう悲しくなるくらい,仕事の資料を取っておくことの無意味さが力説されている」(立花,p.381)と嘆いておられます。先生は蔵書の保管ビル(=通称「猫ビル」)を建てたほどですが,自身で「これは誰にでもできる選択ではないだろう」(立花,p,383)と・・・庶民の感覚,また主婦の日常からすると,読者としては『「捨てる!」技術』に一本!

 

でも,もっぱら蒐集癖のある私は,断捨離の業の途中とはいえ,立花氏の「猫ビル」までの投資に理解できない訳ではありません。以前に紹介の『書庫を建てる』(blog No.185)に現実的なヴィジョンを持った私ですから。捨てる,捨てないの考え方は,男と女で根本的に違うのかもしれません。

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