富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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187:『60歳で家を建てる』 16:14

187:60歳で家を建てる*

 

● 「俺たちはシニアじゃない」

書名『60歳で家を建てる』──(リアル)書店で見かけた時,正直「爺(じじ)臭い本だな!」と思いました。そんな年齢で家を建ててどうするの! って。

頁をパラパラめくると,作者で建築家の湯山重行氏は「(やがて)立派なアラ還だ。昭和の時代なら定年退職して隠居生活に入る年齢ということだ,まいったな」(p.12)と書いています。「アラ還」とは「アラウンド還暦」だそうで60歳手前の世代を差すようです。私には無関係と思っていましたが,湯山氏同様,まさに私の世代を指すようです。でも,こうも続きます「ミーハーでフットワークが軽く,バブルを経験した新人類世代のシニア予備軍」(p.13)と。

1980年代始めに「新人類」と呼ばれた私たちも,今やアラ還です。

「理想は50代から計画する」「60歳から80歳にかけての20年が,『家を建てたからこそハッピーに過ごせた』というエピソードを残せる家にしたい」(p.34-35)と,同世代に向けての指南書が,当『60歳で家を建てる』。

 

● 「必要十分なコンパクトハウス」

TV番組『大改造!! 劇的ビフォーアフター』の建築家も務めた湯山氏は「『減築』という言葉を広めたパイオニアのひとりが,実は私である」(p.132)と自負しています。そう,つまり「不要となったモノと分れて,住まいごとコンパクトにすれば,軽やかに新しいことにチャレンジできる環境が自然と整う」(p.30),もう大きな家は要らない考え方です。

湯山氏は実際にローコストの平屋『60(ロクマル)ハウス』を設計図と供に企画・提唱しています(p.83-108,オプション編=p.109-130)。が,読者の私の興味は,そんな規格住宅の具現化ではなく,彼の「人生にはステージに応じたライフスタイルがあり,ステージごとにふさわしい家に住むことで,より満ちた生活が送れると考えている」哲学的な住宅論にありました。

 

●「60歳で家を建てると,人生が変わる」

湯山氏は「『断捨離』を通り越した『ミニマリスト』なるものが出現している」(p.153)と,今の住まい方トレンドを上手く表現しています。

私も「断捨離」(提唱者やましたひでこ氏の登録商標にもなっているようですが)までは理解できるものの「モノに振り回されず心の豊かさを追求し,無駄と思えるモノを極限にまで排除して生活」するミニマリストには,元来の蒐集癖もあり,なれそうにありません。目指してはいるのですが・・・。

作者の提唱する「適度に整理」「部屋を使いこなしているぞ感」「必要となる道具が適所においてあり,その道具ひとつひとつが機能美に溢れ」(p.155-157)が味わえるコンパクトハウスには,この年齢になって,もの凄く憧れてきました。

 

湯山氏曰く「大企業では65歳が定年になりつつあり,60歳はまだまだ現役でバリバリ働ける年齢になった。還暦という節目が薄れつつ,ただの通過点になる感があるが,人生80年と考えれば,残りは20年。最終コーナーを回り始める大事な節目なのだ」(p.15)をリアルに感じつつ,また今,本気で,住宅の普請を画策している私です ── 勿論「小冒険のためのベース基地になるべく,人生の身の丈に合った『自分サイズの家』」(p.20)です。

愉しそうでしょう!

その大きな引き金になったのは,前々回に紹介 ── 『書庫を建てる ── 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』(blog No.185)であったのは言うまでもありません。

 

『60歳で家を建てる』(湯山重行,毎日新聞出版,2016年)1500円(税別)

 

[追伸]

読者の私,安給料のサラリーマンとしては珍しいと自分でも思うのですが「家」の所有は以下のように4軒の出会いがあります。

1)最初は,社会人(スタートは広告業界でした)になって間もなく,小さな分譲マンション(2DK)を購入(福岡市西区,1984年)。

2)転勤のため(1)を賃貸へ(1988年),当マンションは5年目の秋に売却(1989年)。

3)結婚と転勤を機に,中古マンション(4LDK)を購入(もちろん,これまで全て住宅ローンです)(福岡市南区,1989年)。

4)時はバブル経済期,そのマンション(3)を買いたいという人がいて,比較的高くでの売却(1992年)。

5)子どもが生まれたのを機に,福岡市内に土地を購入し,地域ホームビルダーで家を新築(福岡市城南区,1993年)。

6)愛知教育大学に着任(2003年),官舎住まいをしていましたが,大学の近くの中古マンションを購入(愛知県知立市,2014年7月)。

7)福岡市に所有していた住宅(5)を売却(2014年12月)。

 

したがって,もう,家を購入したり,建てたりすることはないだろうな,と,つい最近まで思っていたのです。

ところが「あれ,俺って,あと数える年数で定年だぞ。その後,どういう生活をするか・・・」

「今の住まいは『大学に勤務しているからの場所』,定年後は,ここに住む必然はないな」

「1階が超小さなサロン,または自分のアトリエみたいな部屋のあるコンパクトハウス」

「そうだ,20歳代ときに憧れた『都市型狭小住宅』づくりを・・・」

更なる夢を再び追いかけている「アラ還」であります。

 

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