185:『書庫を建てる』 | 16:09 |
● 施主と建築家,それぞれが描く家づくりの物語
こんなにも臨場感に溢れ,私にとっては読み進めるのが楽しくて楽しくて仕方のない実話でした。
● 書庫と仏壇の家
施主は東大教授の松原隆一郎氏,神戸の旧家に在ったアルバム写真をきっかけに,これまで意にも介さなかった祖父の昭和初期からの足跡を辿るところから始まります。
住居に近い阿佐ヶ谷での格安中古住宅探し,相続した遺産の金額に加え銀行ローンを組んでの新築も考慮している中,半年後に見つけたのが「土地面積8坪(=28.7平方m,建蔽率80%,容積率300%)」の超狭小敷地。親交のあった建築家・堀部安嗣氏に,1万冊の本と仏壇を収める建築プランを依頼します。新たな建築ですから「この先9年ほどで定年を迎えてから後も,なんらかの仕事を続けなければならない」状況の松原先生,「自宅と研究室の本を整理し書庫の家に運び込んで,今後はそこに通い仕事をする」(p.120)人生が見えてきたそうです。「自宅は『暮らし』のためだけ」そして「ホテルのような仕事場」(p.121)とは,読者である私自身が超憧れるスペースの構想です。
私も,自宅とは別の狭小アトリエの施主になりたい! と真剣に考えるようになりました。それほどまでに影響を受けました。
[追伸]
「自宅は『暮らし』のためだけ」「ホテルのような仕事場」「自宅と研究室の本を整理し書庫の家に運び込んで,今後はそこに通い仕事をする」── こんな考え方があったのかと,目から鱗! 私にとっての実現性はともあれ・・・。
[追伸の追伸]
新潮社のHPに「阿佐ヶ谷書庫プロジェクト」(http://www.shinchosha.co.jp/tonbo/blog/matsubara/)の頁を見つけました。公開内覧会の案内もありましたが,終わったばかりで残念無念!(http://www.shinchosha.co.jp/tonbo/blog/matsubara/ver_6.0_for_web.pdf)
あと1か月早く読み終えていたらなぁ!