富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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182:『知的生産の技術とセンス』 21:48

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● 知の巨人・梅棹忠夫氏をリスペクト

本書『知的生産の技術とセンス』は,先達のリスペクト版として,この秋に出たばかりです ──「まだインターネットも普及していなかった時代に,来るべき情報革命の時代を予見し,個人の情報との付き合い方を解説した本がありました。民族学者・梅棹忠夫(うめさお ただお)先生による大ベストセラーとなった『知的生産の技術』(岩波新書)です」(p.3)。

リスペクトされている原書の舞台は1969年,今のブログやfacebookのようなソーシャルメディアを利用し個人が情報を発信する場など,夢物語の時です。それどころか,オフィスにもコピー機やFAXが見られなかった時代の出版ですが,今でも岩波新書の中でベストセラーを誇っています。

なぜでしょうか・・・

 

● 道具は変わっても本質は変わらない

「梅棹先生の提唱した『知的生産の技術』は,情報の集め方,記録の仕方,そしてアウトプットの仕方など,私たちも今日から実践できる」(p.5)情報の整理に関するバイブルの位置づけです。

「道具は変わっても本質は変わらない」(p.76)精神を受け継ぎながら,時代にそぐわなくなったデジタル情報整理と,ソーシャルメディアによるアウトプットの活動促進を補ったのが本書で,サブタイトルに「知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術」と付いた『知的生産の技術とセンス』です。

 

とは言え,私は,バイブルの方のアナログ時代に慣れた世代(やっとワープロが一般に普及しだした1980年代の社会人組)(それでも「新人類」と揶揄された世代)です。本書で紹介のデジタル情報整理ツールEvernoteなどを駆使している訳でもなく「ツールは変わるが,考え方は変わらない」(p.178)の『考え方は変わらない』の方を地味に歩んでいます。

本書では「発見の手帳」が一つのキーワードになっていますが,私は手書きによるノートが以前よりも増えている状況です。

 

● バイブル『知的生産の技術』の続編として

作者の堀 正岳・まつもとあつし両氏とも40歳台前半,読み進めるとデジタル情報に慣れ親しんでいる20歳台〜30歳台の方を対象にしているようです。出版元も当世代向けの会社です。

昨今,デジタル環境で育った周囲の大学生たち,いきなりPC在りきで物事を進めているように見受けます。これは「道具」に過ぎず,やはり重要さを説きたいのは「知的生産の技術」の素養です。

デジタル対応の部分は当『知的生産の技術とセンス』が補うのを知った上で,先ずはバイブル『知的生産の技術』を基礎編として読むと,堀・まつもと両氏の伝えたかった本質が見えてくると思います。

 

個人の知的生産(アウトプット)が,facebookやYoutubeやブログで容易になった現今,次のエールが印象的です ──「知的インプットまでは得意だ・・・でもアウトプットとなると尻込みをしてしまうという人がほとんどだと思いますが,あえて自分の考えや制作物を人目にさらすことで得られる,この一周めぐる間隔を味わっていただければと思います」(p.226)。

 

作者のお一人・堀氏は,手書きノートの味わいを突き詰めた『モレスキン「伝説のノート」活用術』(blog No.150)を著した方でもあります。

 

『知的生産の技術とセンス』(堀 正岳・まつもとあつし,マイナビ新書,2014年)1080円

『知的生産の技術』(梅棹忠夫,岩波新書,1969年)780円

 

[追伸]

ウメサオタダオ展(表

当『知的生産の技術とセンス』は,国立民族学博物館で2011年に開催された「ウメサオタダオ展」の企画・運営を担当した小長谷有紀氏が監修に当たっています。

 

この「ウメサオタダオ展」と言えば,私は当ブログに展覧会の様子を「番外編」としてアップしています(blog 番外編22)。
「知的生産の技術・研究会」(名著が核となって出版直後に誕生した法人組織)の勉強会としての見学です。
『知的生産の技術』で語られている姿勢は,読書当時に高校生だった私にも強い刺激を与えました。
その辺りも含めて綴ったブログ内容は,後に当研究会が発行する会報に,そのままの形で採録されています。

 

今日,大学生層は「梅棹忠夫」なる人物をを殆ど知らないようです。今回のリスペクト版がきっかけとなって,原書バイブルも次の世代への刺激になるとうれしいですね。
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