富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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180:『「売れない」を「売れる」に変えるマケ女の発想法』 12:09
マケ女

● 良い製品が売れるのではなく,売れるのが良い製品
「技術の裏付けがきっちりとある優れた製品なら,黙っていても売れる」を妄信する社風が残り,技術力には定評がある架空の太田電子を舞台にしたマーケティング論です。
主人公は,太田電子マーケティング部に所属のマケ女・福島理子(入社8年目・30歳),因みにマケ女とは書名にも使われていますがマーケティング女子を指します(初めて聞いたけど・・・現今の業界ヨーゴでしょうか。「負け女」ではない)。

時は,機能面だけではiPotに勝るとも劣らない,しかもカメラ付き,機能てんこ盛りの携帯音楽プレーヤー(コードネーム「ピクシー」)が開発の最終段階で細部の詰めを迎えようとしています。

● 価値を決めるのは売り手ではない
例によって,ある朝,マーケティング部に「販売促進を考えよ」とA4用紙1枚の指示書が置かれている所から,ストーリーが始まります。
「こんなにすごい製品ができたから,きっと買ってくれる。そんな思い込みで,うちは何度も痛い目にあってきたはずじゃない」── 理子の動きが,早くも社内にただならぬ波風を起こしたようです。

「我々技術陣が総力を結集して開発してきたピクシーなのに,君は売れないとはっきり言ったそうじゃないか」「お前なんかに,我々開発陣の必死の思いなどわかるはずもない。マケ女だかなんだか知らんが,小娘が偉そうなことを言うんじゃない」「所詮マーケティングなんて,製品が出来てから広告を考えるだけのセクションじゃないか」── 技術畑一筋30年,親子ほども年の違う開発部・中山部長の逆鱗に触れたのでした。

● 中核価値を還れば新たなターゲットが見えてくる
しかし理子は,中山部長との論争の中で,引き合いに出した自社の超軽量ヘッドフォンが,従来とは違う新しいマーケット開拓で爆発的に売れたケースを振り返るきっかけを得ます。
その後,同期や後輩とカラオケボックスでの論議を重ねる中,次々と企画の連想が広がっていきます。
発想の萌芽と,メンバーとの論議での肉づけで,企画は育っていくものですね(お役所風の会議 ──「議題」と「報告」の嵐などでは,画期的な企画なんて出て来ないです)。
そうそう,カラオケボックスでの会議利用もストーリーの重要な伏線となっています。
かくして,社長プレゼンを経て,ピクシーの販売戦略はどのように進んでいったのでしょう?── 本を買って読んだ人だけのお楽しみ!

でも,最期には「本書はフィクションです」で締められています。

『「売れない」を「売れる」に変えるマケ女の発想法』
(金森 努・竹林敦実,同文舘出版,2013年)1400円
[追伸]
久しぶりのマーケティング物語です。
以前に紹介したのは,事実に近いフィクションとして『銀座ママ麗子のマーケティング事件簿』(blog No.127),サントリーの実話として『缶コーヒー職人 ── その技と心』(blog No.131)があります。もう5年前になりますから,私の周りの大学生も,完全に一巡しています。

主人公・福島理子の所属は「マーケティング部」ですが,私の中では懐かしい響きです。なぜなら,私自身が今から12年ほど前に所属していたセクションだからです。
本の中,太田社長の「必要なのはメーカーの重要セクションとしてきちんと機能するマーケティング部だよ。広告代理店と仲良くしてくれるだけのマーケ部なら,中山部長の言うとおり,要らない」との発言がありますが,私が居たのは,この広告代理店の側のマーケティング・セクション,なんだかな〜,という感じではあります。
それと,開発部長の「所詮マーケティングなんて,製品が出来てから広告を考えるだけのセクションじゃないか」の発言,これも,なんだかな〜,の気持ちです。
でも,本書の最期にあります── 「本書はフィクションです」。
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