富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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173:『怒る企画術!』 12:46
怒る企画術!

40歳代までにはなかった読書の愉しみが50歳代になるとあります。読み手の私が,書き手と同じ年齢域にあるのです。
この本『怒る企画術!』の作者・吉田正樹氏は私と同世代。「あっ,あの昭和40年代に同じ少年期をおくったんだ」「昭和の後半のあの頃,自分勝手でわがままで世間から『新人類』などと呼ばれた経験を持つ世代だな」などと,私の中で勝手に共感したり,背景となった時代を回想しながらの読書でした。

吉田氏は2009年,50歳を機にフジテレビを退社,TV媒体としての番組制作を脱し,メディア企画やコンサルの会社を立ち上げています。「このオレに口ごたえしてくるとは何事か!」(p.117)という凄みあるプロデューサー時代の「怒る企画術」を綴った内容です。メディア業界の後輩へ向けて,自身が積み重ねて得た持論が展開されています。

が,しかし,新人時代は「二〇代の下積み時代は仕事の内容も非生産的です。ひたすらコピーをとっては仕分けし,何十部もホチキスで留めるとか,地味で細かい仕事が多い」「僕は生意気ではありますが,それほど自信家でもないので,このまま芽が出ないまま終わるかもしれないと思って鬱々としていた時代」(p.32-33)だったようです。「笑っていいとも!」のAD時代です。
読者である私の1980年代のあの頃は,会社で「やらされている感」が募ってばかり,というか仕事が何たるか,自分の役割が分からなかったものです。当時,昼休みのオフィスの定番「笑っていいとも!」を囲んだ和やかな社員の休息の輪にも入れなかったほど不満と不安がありました。
そのテレビの向こう側の制作現場では「不満やるせない気持ちでいっぱいだった」(p31)同じ年代の吉田氏がいたわけです。新人時代は,今思うと,みんな悩んでいるのです。

一般的に「若いときには人生の目標を立てよ」となりがちです。
吉田氏はズバッと「若いときには人生に目標がないのは当たり前の話です」と斬ります。「本当はもっと迷って,迷って,迷うところから出発するものでしょう」(p.53)と。5.6年が過ぎると仕事のコツが掴め,楽しくて仕方がなくなるのですから組織って面白いですね。吉田氏の言葉を借りると「仕事に夢中になれたら,どんなに長く働いても疲れを感じません」(p.167)。

作者の「若き悩み」に喰いついてばかりの私の読書でしたが,実は,本書の伏線に過ぎません。
中身の本質はタイトル通り『怒る企画術!』。
とくに第二章は「ぶれないコンセプトの組み立て方」のマーケット論,第四章の「ケンカのできるチームがいい」では企画の組織論が,自己の番組企画の体験と反省から展開されています。
たとえば「ウケるタイトルは語感がよい/記憶するのに脳が負担を感じるものではないほうがいい」(第二章 p.87-89),「『自分がやりたい』というだけでは,根拠がない。しかし,会社の利益まで落とし込めるようなイメージができていれば,反対意見に勝てる可能性があります」(第四章 p.163)とかね・・・。

企画に対する現場実践に裏打ちされた,番組制作でなくでも通用するキーフレーズも満載です!

『怒る企画術!』(吉田正樹,ベスト新書,2010年)780円
[追伸]
スポットの当て方,本文と追伸が逆になってしまいますが,作者からの本質メッセージである「企画術」の方は,こちらで案内します。

吉田氏図式(1上手く伝わる「戦略と戦術」の明解な切り札はないものか? と考えていた折,本書は私に次の「図式」を示してくれました。フジテレビで「爆笑レッドカーペット」など数々のヒット番組の舵取りをしてきた吉田氏の「企画が本質をついているか,因数分解にあてはめて確認できる」(p.69)とした図式です。
一番大切なのは勿論「a」です。

企画の「戦略(原著では「企画のどこを切っても貫かれる大きな理念」と表記)」は,「ちょっと冒険」と「工夫できる戦術(原著では「工夫できる切り口」と表記)の掛け算で効果が数倍増する意味合いを,視覚的に表現しています。
今度,大学の「企画」をテーマにした実習の後半で,学生に紹介したい図式です。

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