富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
170:『学び続ける力』 15:17
学び続ける力(1

 

やたら校務に追われていた最近,ところが,その合間を縫って,なんと自分でもびっくり! 今週の月〜水曜日は,ゼミの卒業旅行で沖縄に行けたではありませんか・・・。

中部国際空港(セントレア)の書店で購入して,その空路の中で読んだのが池上 彰氏の『学び続ける力』。今年になって出たばかりの本です。出発までの短い時間でも選べた理由は,第2章のタイトルにもなっている「大学で教えることになった」が目に入ったからです。

 

池上氏は2012年4月から東京工業大学リベラルアーツセンターの教授になっています。前期授業『現代社会の歩き方』(2年生以上対象)と『現代日本を知るために』(1年生対象)での「研究やアルバイトなどで慢性疲労状態の学生」(p.53)へ向け,池上氏の教え学ぶ視点からのレポート構成です。

「いまの学生に90分ずっと集中して聴いてほしいといっても無理でしょう。(中略)東工大の学生は,30分は集中して聴くことができるでしょうが,やはり工夫が必要です」(p.52)と考える池上流 Plan → Do → Check → Action の展開を垣間みることができます。

あれほどの売れっ子ですから,最初は教室の収容に対し履修希望者が殺到したようです。しかし成績評価の段階で「『池上は評価が厳しい』との情報が学生の間に広がったのでしょう。後期の授業の履修希望者は,教室の定員を大きく下回りました」。ところが,池上教授の見解「楽に単位が取れる科目がいい。これは,私の学生時代もいまも,変わらぬ学生気質です」(p.97)とは,掴み所の違いを感じます。凡人なら,自分のことは棚に上げて「今どきの学生は・・・」となりがちですからね。

 

東工大といえども,我が愛知教育大学と似た状況はあるようです。

「いま,一人暮らしで新聞を取っている学生は,残念ながらほとんどいません」。家から通っている学生にも「『何新聞なの?』と重ねて訪ねると,『さあ……」と出てこない」(p.131)と。

原稿用紙が使えない学生がいた時の驚きの記述では「必ず最初の1マスは空けて書いていき,話の流れが少し変わるときは段落を変えて,また1マス空けるということができない学生が意外と多くいたのです。ふだんのメールでは,改行しても行間は空けないでしょうし,小学校では習ったものの,それ以来,書く機会もなくて,忘れてしまったのかもしれません」(p.80)もあり,これも愛教大と同じようです。メールやブログなどweb上の書き方を原稿用紙でも応用してしまう,よくあるケースです!

上記,本の中から池上教授を通したマイナス面を取り上げてしまいましたが「出席はとらない」宣言をした授業にも「5月の連休の谷間の授業でも,大勢の学生が出席してくれたのには感激しました」(p.12)に代表されるように,現代の学生を高く評価もしています。同時に教授側からありがちな「連休の谷間は休講」の措置を取らない池上教授の姿勢にも敬服です。

── と,行きと帰りの飛行機の中は,本を通して池上流の「授業デザイン」論を受講した時間でした。

 

『学び続ける力』(池上 彰,講談社現代新書,2013)

 

[追伸]

本の中に,OBから現役記者へ警鐘を鳴らす記述がありました。かつて中日新聞の方を招いた愛知教育大学の授業の中で登場した内容とほとんど同じです。池上氏に限らず,先輩の記者は,同じような気持ちを持っているのですね。
「余談になりますが,いま,総理記者会見にしても官房長官会見にしても,新聞・テレビの政治部の記者はみんなパソコンを持ち込んで,話の内容をひたすら打っています。昔はメモをとっておいて,あらためて原稿用紙に書いたものですが,いまはキーボーボで打ったメモをつないでいけば,そのまま原稿になります。
これだと,下手をすると,ただ記録するだけになってしまいます。話し手の顔ではなく,パソコンのディスプレイを見つめていたら,会見者がニヤニヤしているのか真面目な顔なのか,しゃべり終わった途端にニヤリとしたのかとか,ニュアンスが読み取れないままメモをすることになってしまいます。(中略)これではレポーターではなくポーター(運び手)です」(p.103〜104)。
臨場感を掴むことこそ,その場にいる特権なのですからね!── 私自身も,新聞記者の方から学んだ内容です。
| 知的生産の技術 | - | - | posted by tomiyama - -
<< NEW | TOP | OLD>>