富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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168:『コンサルタントの考える作法』 21:26
コンサルタントの考える作法(2

 

教育学部に着任して10年になりますが,今でもビジネス・マーケティング書を読むことは多いのです。

 

えっ,今の仕事と関連が無い? ── いいえ,いいえ,世間では接点がない風に思われていますが,教育とマーケティングは同じ軌道なんです。元ビジネスマンの私自身が,教育大学に来て改めて気づかされました。

今回の『コンサルタントの考える作法』,作者・樋口陽介氏はコンサルティング会社(アクセンチュア社)に勤める新進のマネージャー(2009年の執筆時34歳)。彼は「私自身は,作法を離れて自分のやり方を総合化/体系化して道を離れるところまでは,どんなに少なくともまだ10年はかかると思います」(p.5)と謙遜していますが,書名の『考える作法』とは ── 
1)壁に行き着くための必須スキルとしてロジカルシンキングがあり,
2)壁の先に進むための『自分なりの作法そのものを考える』ことの必要性
── 二つの意味が託されているそうです(p.4要旨)。

本書の構成は,作者が新人研修の講師を担当する中で培われたようですが,芸事の世界でいう「守破離」の「守」にあたる基本形の大切さ(第1〜4章),それと作者自身が目指す「クライアントに刺さる」視点獲得の生活術(第5章),から成ります。

クライアント(依頼主)からのコンサルタントへの期待は「客観的な第三者」(p.154)ですから,「作法を守る」段階で留まっていては「単なる整理屋」(p.167)に過ぎず,打ち手には繋がらない。
でもショートカットなど無く「物事の関係性をきちんと整理できて初めて解決の道筋が立てられる」(p.165)わけで,先ず定石的なフレームワークを学び,体得し,起点にすべき,と。

そして道を深め,踏み込むのですが「どの道を進むかはその人の資質,いってみれば個性」と,この第二段階こそを作者は「個性」と呼んでいます。さらに型の外にある「ノイズこそが個性」(p.190-191)と記しているのが新鮮です。「守」を体得した上での「個性」と言えます。
 

「知らないことや想像できないことは思考から抜け落ちる」(p.46,p.65)のが常,多様な視点を持てるようになるためには「近道はなく,広く世間の言葉を知る,つまり,新聞や雑誌,本をよく読むといった行動がまずは求められます」(p.62)と,日々,コンサル業を実践しつつ,後輩も育てている作者の生活も窺えます。

作者が使っている「クライアントに刺さる(影響力のある)」の語彙、企画シーンでの納得の表現です。


『コンサルタントの考える作法』(樋口陽介,PHP研究所、2009年)1300円

 

[追伸]

本書を読んで「教育」と「作法」についても考えました。

ビジネス・マーケティングの本なのですが,このまま教育書になっています。「作法を体得し,そして,その先に進むために様々な試みを行う」(p.4)。

子どもの創造性は豊かだ,というまことしやかな見解があります。でも,これが正論なら,大人は創造性が退化している前提ですので,教育は不要な作法となってしまいます。子どもが「勢い」で成しているかに見える創造性に対し,作法を体得した大人は「意識的」な型破りを実践したいものです。本書に何度も登場する「守破離」(世阿弥の教示)そのものです。

本書ジャケットの装丁に用いられているフリーマップにも「作法→守破離」「身体化 ── 作法の習得」の書き込みが見て取れます(写真をクリックすると,かろうじて判読できる大きさになります)。

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