富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
162:『論文・レポートのまとめ方』 17:30
162:論文・レポートのまとめ方

この時期,大学では卒業研究の口頭発表会があります。私は今年,専攻領域の枠を超えた大学院進学予定者だけのコースの口頭発表会にも顔を出しました。「よく調べた上で主張を導き出し、論理的にまとめているな」と感心する成果レヴェルもあれば???の発表もあり・・・。

口頭発表の前提になるのは,言うまでもなく卒業論文です。
ゼミ学生の論文指導と並行して,昨秋からチビリチビリ読み進めてきたのが『論文・レポートのまとめ方』です。この類の本では,同業者(作者の古郡廷治氏は電気通信大学 教授/出版当時)の卒論指導を窺い知ることができます。「形式に難点があっても読んでみると内容のある文章もある。いくら形式が整っていても内容がなければ文章は不毛」(p.28)なのですが,大学で卒業研究が課されるのは,論理だった主張を「効果的に表現する」(p.37)作法を身につけるトレーニングだからです。

論文には内容と形式があります。人生最初の論文に対して,内容面と形式面の両輪を整えるのは難しいでしょう。形式面での精緻化は大学院の段階では完璧に揃えて欲しいと願っています。但し,学部段階であっても,適切な引用の仕方,註釈の付け方などは習得しておきたいものです。
学部の卒業論文で整備できなかった「ちゃんとした形式と適切な文章表現」(p.3)を見直す上で,この本『論文・レポートのまとめ方』は指南書となるでしょう。大学院の1年次の夏休み前くらいに読み,マスターしてもらいたい内容が詰まっています。
本書のコンテンツは,
第1章:文章の要諦、第2章:論文の構造、第3章:論理の文章,から成り,それぞれ3〜4の節が有り,さらに各々3〜4の項目と休憩室で構築されており,まさに論文の階層に則っています。

本書の中で,やっぱり書かれているな! と思ったのが「接続用語や照応詞の乱用は避ける」の項目です。「接続用語は文の接着剤あるいは釘の役目を果たすものである。接着剤は使わずに済むものなら使わない方がいい。木工製品でも,悪いものほど接着剤や釘をむやみに使っている」(p.192)の件。
池上 彰氏の『伝える力』(blog No.142)にも,清水義範氏の『大人のための文章教室』(blog No.159)にも明記されています。この御触れに出会ってから,私も意識して心掛けている掟です。

『論文・レポートのまとめ方』(古郡廷治,ちくま新書,1997年)756円
[追伸]
卒論必修化率
近年は,卒業時に卒業論文・研究を課さない大学もかなりあると聞いていました。

実態はあまり知らなかったのですが,先日の『朝日新聞』に,学部別での実態調査がグラフで載っていました。
勤務校は教育学部で,9割超の必修率のようです。

専門家養成の医学系は別として,卒論・研究の必修化率が少ないのは法学・経済などの社会科学系です。この現象は学部の特質によるものだけではなく,マスプロ教育が可能な学部かどうかにもあります。教育学部の必修化率が最高値なのは私自身が意外に思ったのですが,少人数ゼミの伝統が残る国立大学が大半だからだと思っています。卒論・研究の指導体制は,学生の研究室配属(ゼミ)制度がある大学でしか実現しないものなのです。

当の大学生にとって,これを自己投資とみるか,面倒臭い儀式とみるか・・・。大学で卒業論文・研究を仕上げるのは,やはり4年間の学びの集大成であり,積み重ねの成果であり,論理だったプレゼンテーションの鍛錬になると,私は確信しています。
| 知的生産の技術 | - | - | posted by tomiyama - -
<< NEW | TOP | OLD>>