富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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158:『ふかいことをおもしろく』 15:24
「ふかいことをおもしろく」

「むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,ゆかいなことをいっそうゆかいに」とは,井上ひさし氏(1934〜2010年)の名言ですが,この一節を題名にした自伝です。

ずっと前に何かの本で読んだ記憶もありますが,1950年代後半,ラジオドラマの懸賞応募に書くのが楽しかった井上氏にとってのライバルは,どうしてもかなわなかった藤本義一氏であったことが,当書でも語られています。その後,お二人とも直木賞を受賞しました。
多くの懸賞応募が起用のきっかけとなった井上氏のレギュラー番組といえば,私が幼少期に見ていたNHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』(1964〜1969年),情景や台詞まで今でも覚えているほど強烈な印象です。若き井上氏が,この人形劇の台本(共作)を書いていたのを知ったのは,随分と後になってからです。

井上氏のふるさとは山形県川西町であることが冒頭に書かれていますが,父親が亡き後に母親が移り住んだのが岩手県釜石市で,井上青年はこの地で最初の就職をします。「海のそばで,街は鉄と魚ですごく賑わっていて,映画館もたくさんあるし,芝居も見られて,母もいる。釜石は,僕には思いのほか居心地がよかったのかもしれません」(p.57 )。

岩手県釜石といえば・・・今年3月11日に東北大震災で大きな被害を受けた地域です。
井上ひさし氏は2010年4月に永眠しましたが,本書は2007年9月20日に放送されたNHK BSハイビジョン番組をもとに書籍化,亡くなる2年半前のメッセージです。ところが,巻末には,震災から発生した原発事故への人間の反省ともとれる「100年後の皆さんへ,僕からのメッセージ」が付いています(「続きを読む」に写真)。

「(前略)できたら100年後の皆さんに,とてもいい地球をお渡しできるように,100年前の我々も必死で頑張ります。どうぞお幸せに。井上ひさし」(p.117)

『ふかいことをおもしろく』(井上ひさし,PHP研究所,2011年)1100円
[追伸]
100年後の皆さんへ巻末に「あ,そうそう,それからね!」という風な付録のように付いている「100年後の皆さんへ,僕からのメッセージ」のページ(p.116-117)を紹介します。
今年(2011年)3月11日以降の日本の状況を井上氏はどうみているでしょう。

(画面をクリックすると読める程度に拡大されます)





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