富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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157:『「図工・美術授業にカメラ」始めよう,カメラの授業!』 12:00
始めよう,カメラの授業!

私の勤務先は教員養成系の大学ですが,在学生は「絵を描くのが苦手」なので『図工・美術』は大嫌い! な教員志望者が半数以上はいるようです。多くは小学校の教員を希望しています。
「絵を描く」のは制作の一部分に過ぎませんし,自らの制作(making)と,教えること(management)を同じに捉えては早とちりです。

そんなことを考えている中で見つけたのが「これ一冊で図工・美術が好きになる」と見出しの付いた『「図工・美術授業にカメラ」始めよう,カメラの授業!』です。

全120ページありますが,指導案は冒頭の8ページに写真仕立てで視覚的に詰まっています(下左写真)。
「図工・美術授業にカメラ」の指導指針は「子どもたちが,図工・美術授業で造形表現した作品を,作品のよさや,周りの風景との関係の面白さなどを考えながら写真を撮影する」(p.4),カメラとの立体利用です。
指導ステップは ──
1. 造形物を作る(撮影をイメージしながら,いつもより真剣になる)
2. ロケハンする(撮影場所の下見,光や影の影響,バックの雰囲気を探す)
3. 写真を撮る(簡単なカメラの機能を教わる。約1分,これで充分)
4. 鑑賞する(これが大事だ。プレゼンテーション能力を高める)
5. 文章を書く(具体的に一連の流れを書く。写真を見ると書ける)
という流れです。

p.17〜84は全て「第一回 全国学校図工・美術写真公募展」の作品集(下右写真)となっており,具体的に「図工・美術授業にカメラ」の展開例が掴めると思います。p.85以降は協賛企業の広告で,カメラのブランド紹介となっています。

今や,小学校でもデジタルカメラを導入している学校は多いようです。「図工・美術授業にカメラ」を使うことで,作った作品を更に昇華でき,新たな表現の楽しみが増えそうです。
小中学校での図工・美術教育を起点としての「ポートフォリオ教育」への足がかりにもなっていく期待感があります。

始めよう,カメラの授業(指導案)始めよう,カメラの授業(作品集
教師向け指導案のページ(左),子どもの作品例(右) クリック拡大可

『「図工・美術授業にカメラ」始めよう,カメラの授業!』
(社団法人日本広告写真家協会,ピエ・ブックス,2010年)1575円
[追伸」
つい6.7年前まで,私は頑にフィルムのカメラに固執していました。プロ用のリバーサルフィルム(いわゆるスライドフィルム)を用い,大衆的なデジタルカメラをバカにしていた節があります。シャッターと撮影瞬間のタイムラグや画素数などに関し,今日のように安定していなかったのもあります。
そんな訳で,デジタルカメラが小学生にも使える「学用品」に進化する,または「図工・美術授業にカメラ」という視点も持ち合わせていませんでした。
技術の進歩で急激に裾野が広がる,そのことで学校教育も変わっていく! 狭い意識を捨てなくっちゃ!
| 教育科学 | - | - | posted by tomiyama - -
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