富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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148:『人生二毛作のすすめ』 13:31
人生二毛作
最近は,人生訓を綴った本の作者が私と同世代人である事も珍しくなくなってきました。人生訓は作者より若い層へのメッセージですから,私にとっては臨場感がある指針にはなりません。
ところが「ことし,87歳」と語る,あの『思考の整理学』の作者・外山滋比古氏が,中年を含めた若い層に人生訓のプレゼンテーションをしてくださいました。

選択肢がひとつしかない人生は送りたくなかったという外山氏が「年齢を重ねても,気力にみなぎる人生を送るにはどうしたらいいか。そのために,若いときからどんな心構えをもって生きればいいのか」と(「はじめに」より)。 

「気がつけば,80歳をとうに超えた年齢になっている」外山氏からの若い者へ,気力充実の秘訣を「自分は一毛作の単作人生ではなくて,二度の作つけをする二毛作人生を送ってきたからではないか,そんな思いがします」とエール,中身は六つの章から成ります。
後半の章は,これまでの著書の随所で触れている「知的生活の極意」(第4章のタイトルでもある)を,語り口調(本書は,おしゃべりの内容を文章化したとの事)で解説しています。
人生二毛作の神髄が綴られているのは,第1章と第3章。とくに私が惹かれたのは「意気軒昂な80代へ向けて」が綴られた第1章です。中でも「40代になったら『将来の仕事』を考える」「第二の人生に備えた資金づくりは30代から」「50代でもうひと苦労」の各節は臨場感アリアリです。 
このさわりをゼミの学生にも話したところでしたが,当然ですがピンと来なかったようですね。だって彼らは20歳代の前半ですから・・・。

この教示の中で,私が損ねたな! と思うのが「30代で,将来を見据えた資産形成の第一歩」。外山氏は,32,3歳のころに株式投資をはじめていたそうです。株をやる人間は胡散臭い目で見られていた時代だそうです。「株式投資にも,それなりの努力は必要です。自分の生き方に対する投資もまたまたしかりです」。

若い頃は「へそ曲がり」と言われていたそうですが,本の中でも「かつての仲間意識もやがて出世格差で薄れ,定年がとどめをさします」や「(中年以降の読書とは)誤解をおそれずにいえば,よけいな読書はしないことです」など,強烈ですが「人生二毛作の基本精神」としては,さもありなんと思うばかりです。
最終の第6章は,健康管理の養生訓が短編で綴られています。
当書のように,若人ではなく中年層を対象にした人生訓は,滅多にないですよね。
 

『人生二毛作のすすめ』(外山滋比古,飛鳥新社,2010年)1200円
[追伸]
この本を読んで,大学生になったばかりの頃(1980年頃)に読んだ『続・知的生産の方法』(講談社現代新書,1979年)を思い出しました。作者は渡部昇一氏で執筆時49歳。大学生くらいの若者層へ向けた「知的生活」の教示でした。
その中にも,かなりの頁(第4章「知的独立について」p.119-182)を割いて「インディペンデント・フォーチュン(独立できるだけの財産)」形成の内容があります。経済的独立が必要だと若くして悟り,働き盛りの時期に思う存分活躍することができた人物として,農学者・本多静六(1866〜1952年)氏を挙げています(ネットで検索しましたら,ご本人も『人生計画の立て方』の著書がありました)。

外山滋比古氏にしても,45歳の時「無謀とも思える辞職を背中から後押ししてくれたのが株式資産だった」と回想しています。但し「若いうちからがいいと思うのは,年をとると欲が深くなるからです」とも。
でも,こうも語っています「人生二毛作のために,いかに準備万端を期していても,第二の人生には,ひと山もふた山もあります。よい意味でも,悪い意味でもです」「人生,禍福はあざなえる縄のごとし」。
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