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「絵が上手い」とは,どういう状況を指すコトバなのか? 考えたことはありますか?
「こればっかりは才能だからネ」と片付けていませんか!
私の勤務校は教員養成系の大学ですが,学校の先生になる人には「美術は才能」という考え方を完全に払拭してもらいたいと願っています。そして「個性や才能の産物ではない」と授業展開をしています。
私がもっとも重視しているのが「着眼力」── モノ・コトをどういう表現のキリクチで掴むか! トレーニングによって誰でも体得できるようになるのが全ての教科の役割(この場合は図工・美術)と考えています。
理屈はさておき,では「キリクチ」の大切さ(順番として「技能」は後から追いかける)を実習できる的確な教材は何だろうか,と探していた時に発見したのが,この『絵封筒をおくろう』でした。葉書を使う「絵手紙」はあまりにも有名ですが,今回は画面に切手を貼る「絵封筒」です。封筒の中で切手が生きているみたいに表現します。
1)表現のキリクチ(着眼点)は「切手とのコンビネーション」で成立する。
2)郵便の受取手に,表現のキリクチが伝わること。出来映えは自己の満足度ではありません。
3)受取手へのプレゼントになっていること(Presentation)。
なんだか,表現することの本質が凝縮されている! と思いませんか。
楽しくって,また唸ってしまう国内外の「作品」が,ページを開く毎に違った誌面の表情で紹介されています。こんなテーストが「図画工作」の教科書だったらうれしいな,と感じます。
基本は手紙ですから「作品」は受取手のもの,妙な著作権もありませんネ(そもそも送り手がそんなの主張してしまっては手紙であることの存在を否定することになります)。
本に載っている絵封筒を眺めると,出したくなったり,貰いたくなったり・・・,即時性のあるメール(本来「手紙」の訳なんだけど・・・)なんか屁のようです。
本を購入して2週間後,上記(1)〜(3)の「絵封筒」ならではの条件を提示・確認しつつ,授業の中で実際に大学生に挑んでもらいました。絵の上手さではなく,いろんな土俵で勝負できることを理解してもらえたかな,と思います。作られた作品群を,下記「続き」で披露します。

本の「あとがき」には,下記のメッセージが添えられています。
「・・・絵封筒には,プロやアマの垣根はありません。絵の上手下手もありません。必要なのは,相手を喜ばせようという気持ちと,自分自身が楽しもうという気持ちだけ。・・・」
『絵封筒をおくろう』(きたむらさとし・松田素子,文化出版局,2007年)1700円
