富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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133:『紙とコスト』 13:22
紙とコスト(カヴァー)
本には「読み込む本」と「味わう本」とがあると思います。
前者は書き込みをしていくことで読破した気持ちになります。一方「味わう本」は文字通り,紙の色や文字組み,造本仕様など愉しみ「ながら」読みます。この紙面には,書き込みなんかさせる表情はありません。

今回は,紙・造本・印刷をテーマとした書名も『紙とコスト』,味わう本です。
紙の商社「竹尾」では,毎年『竹尾ペーパーショウ」を開催していますが,2003年度のプレゼンテーションを本にまとめものです。
紙づくりの基礎講座のイントロがあり,中心はパッケージング講座,そして特殊紙(辞書の紙,名刺,包装紙・・・),締めはエディトリアルデザインです。この本自体が,紙製品を商品化する発想プロセスのバイブルとなっています。
書名に「コスト」と付いているので,印刷関係者への経営指南書と思われてしまうかもしれませんが,紙を主素材として誕生した商品群のデザイン秀作集です。でも作品写真集ではありません,端正な組み方で文字情報もいっぱい詰まっています。

紙とコスト(本文)
私が惹かれた頁は「実際に作られたデザインのラフやダミー指定紙,サムネイルなどと,最終的な仕上がりの姿とを対比させ」(p.129)た最終のエディトリアルデザインの章。僅か11頁に過ぎませんが,完成すると捨てられる運命の印刷指定紙やカンプが,完成した書籍と伴にに写真で紹介されています。後々,このような形で紹介されるのを前提としているかのごとく(建築設計書でも思うのですが,やはり作者は意識して保存しているのでしょうか?),作品化されている姿に博物的に見入ってしまいます。

広告・マーケティング関連の出版社「宣伝会議」社の編集・発行で,企画とエディトリアルはデザイナー木下勝弘氏,竹尾の全面協力という体制での出版です。「味わう本」には多い事例なのですが,奥付には「本文(4色頁):DXダイヤペーク/四六判T目/110kg」という具合に,使用された7種類の紙のデータも載っています。


『紙とコスト』(宣伝会議/編,宣伝会議,2003年)2400円
[追伸]
久しぶりに本棚から取り出し,コーヒーを飲みつつ頁をめくった本です。
というのは,8月末からのこの半月間,学会誌のエディトリアルデザインを担当することになり,改めて本文使用紙・表紙・奥付スタイル等の復習の参考書に選んだためです(そういう訳で,当ブログの更新も滞ってしまったのでした)。

大学美術教育学会(愛知大会)この美術教育学会は,9月26・27日の日程で名古屋で開催されましたが,どの学会誌の定番でもある[表紙:マーメイド紙やレザック紙][本文:上質紙]は思い切って止め,何と表紙は金色紙(「メタルック」光沢PP圧着加工),本文には書籍紙(「琥珀」)を採用しました。割付は,2段組・3段組・5段組,それらの併用グリッドで無機的に設計。会員の反応はいかがだったのでしょうか!?



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