富山祥瑞の大福帳(読書ブログ)
「大福帳」とは,江戸時代に商屋で使われた金銭出納帳で,現在の簿記のように勘定項目を分けずに取引の順に書き連ねた経営活動の記録。
この発想に倣い,ジャンルを問わず読んだ書籍の記録を順次残していく知的生産活動の日記としていきたい。

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161:『アイデアを形にして伝える技術』 15:01
アイデアを形にして伝える技術

随分とブログの更新が空いてしまいました。何かと気忙しい1か月でした
が月並みな言い訳。今回紹介する本も小分け小分けで節ごとに読み進めやっと読了です。

作者・原尻淳一氏が恩師の鶴見良行先生のご自宅で知的生産の技術現場を目のあたりにした大学院の学生時代の回想から始まります。この時,原尻青年は「早く受験勉強の学習スタイルから脱却し学習スタイルそのものを『アウトプット(出力)の構え』に変換しなければならないと猛省」。
「鶴見先生のレベルまで行くには相当な時間がかかるかもしれないけど社会人になったらこの『仕組み』を持とうと決心」,それから15年後に著されたのが本書『アイデアを形にして伝える技術』です。
アイデアを形にして伝える技術を築くための身構えとして大学生くらいに読んでもらいたいと感じた本です。

〈第一部 インプットの技術〉と〈第一部 アウトプットの技術〉から成ります。広告代理店でのビジネス現場を経た作者ならではの「仕組み化(=継続してアイデアが生まれる装置)」と,アイデアを形にする「企画術」の型(フォーマット)の重要性が綴られています。

読者としての私の興味は[第4章 型の効用]と[第6章 企画書を書く]でした。
「『型』といきなり言われると『型にはまるという慣用句があるように何だか独創性を削がれるような気がしていい気分ではありません」(p.113)という前置きをしつつ「型は型にはまるものではなく自分自身にフィットさせつくりあげていくもの」(p.119)。

ビジネスパーソンであれば誰もが痛感するのですが企画書を作る能力は一朝一夕では体得できません。作者はどのようにして能力を開発したのか? ―― これに関しても作者は「学びの型」を持っていたようで次のように披露しています。
「広告代理店に入社して初めて配属されたマーケティング局で,50人近くいる先輩の優れた企画書を密かにコレクションする作業を始めました。自分がたずさわる『ビジネスのレシピ集』をつくろうと考えたのです。(中略)それをわたしは『名作ファイル』と呼んでいました。名作ファイルは大きく
『企画の型』のファイル『デザイン見本』のファイルの2種類に分かれます」(p.160)。
「企画の型ファイル」は全体像を把握するヒント
片や「企画の型ファイル」は図解等のヒント用だったそうです。

これら作者の知的生産活動への取り組みは鶴見先生のスタイル(写真・読書カード・フィールドノート)が原点。本書には「鶴見良行先生の膨大な読書カードの一部」(埼玉社会・共大学共生センター保存)の写真が大きく掲載されていますが恩師へのリスペクトを表したものだと察します。

『アイデアを形にして伝える技術』(原尻淳一講談社現代新書2011年)720円
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番外編 25:雑誌の編輯(5) 15:34
雑誌(5)拡大

大学での授業
で,雑誌編輯を展開するようになって早いもので7年となります。当ブログにも,3年目の雑誌からを紹介(2007年)(2008年)(2009年)(2010年)してきました。
半期(15回)をかけてチーム作業で一冊の雑誌を出版する授業(「デザイン制作 l 」)での成果品です。今年は12名の受講者を3チームに分け,4名一組で一冊の雑誌をつくりました。

各チームごと雑誌のテーマ模索に始まり,取材,写真撮影,原稿執筆までのソフトウェアを揃えたら,次に版下データ作成,カラーのレーザープリンターでの自前印刷,そしてようやく印刷会社へ製本(本文:無線綴,表紙:くるみ)を依頼できますが,この行程は当然ながら15回では納まりきれず,夏休み中の補講をもってようやく完了します。
秋口には,美しく製本された形で納品されてきます。私の大学生時にはオンデマンド印刷技術が未発達(というか,その概念すらも存在しない)であったため,届いた時には,私自身も今さらながらの遅れてきた達成感が湧きます。

今年も,またまた楽しい雑誌ができあがりました。
この7年間で,22種類の雑誌ライブラリーが揃いました。各誌それぞれ20冊程度のオンデマンド発行ですので,受講学生と取材先の一部にしか渡らない幻の雑誌です。

●『みんなの知りたい100のひみつ ―― ガチャガチャのひみつ』
ガチャガチャを通し,大学生が子どもに向けて確率論を語った。総22頁。

●『Chotto』
豪華公共トイレ,温水洗浄トイレ,トイレの歴史,トイレの世界観など満載。総20頁。

●『I ’ MA』
くちびるに特化してアート的なあらゆる視点を分析。総24頁。

どうしても入手したいという奇特な方は,ご一報ください。残部僅少,無くなり次第御免。
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160:『ジュニア学研の図鑑 植物』 『小学館の図鑑NEO 植物』 12:55
学研の図鑑(植物)

最近のマイブームは
植物の写真を撮ることです。
撮影エリアは大学のキャンパスに限定しています。5年ほど前
大学の発行物の埋め草用にストックとして撮り始めたのがきっかけです。スタート時は見栄えの良い樹木の花(モクレン・ハナミズキタイサンボク・クチナシなど)ばかり撮影していました。そのうち名前の分からない植物や雑草にも目がいくように・・・そして撮影にくっついて名前や生態を調べるのが楽しみになってきました。その際インターネットは便利ですが植物の専門家でもない私は写真を一つ一つ見ていくことになり大変です。

このところ,とっても重宝しているのが小学生向けの「図鑑」です。
書店では子ども向けコーナーに置いてあるので
こんな便利な解説書を当初は思いつきもしませんでした。子ども向けとはいっても解説は丁寧で植物に興味はあるんだけど・・・という素人の大人でも十分に読み応えがあります。これで目星をつけてインターネットで検索すると幅広い情報が得られます。

図鑑(本文)2種類自分が撮った野草との照合で便利なのは,やはり実物写真の掲載が多いのが特徴の『ジュニア学研の図鑑 植物』です(写真奥)。こちらは「科」ごとになっていて例えば「アブラナのなかま」「ツツジのなかま」という具合に系統別の編集です。姉妹版として少し詳しい増補版も出ています。

また
写真よりもイラスト表現を中心にすることで生態の解説に重きを置いた編集の図鑑としては『小学館の図鑑NEO 植物』があります(写真右)。こちらは季節ごとの時系列展開なので検索としては早分かりです。

目下,愛知教育大学のキャンパスには物凄い種類の植物が生息していることを探究中です。絶滅危惧種も発見したいものです。

『ジュニア学研の図鑑 植物』(大場達之/監修,学研,2007年)1500円
『小学館の図鑑NEO 植物』(門田裕一/監修,小学館,2002年,2009年第2版)2000円

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159:『大人のための文章教室』 21:05
大人のための文章教室

作者・清水義範氏は,私が勤務する愛知教育大学の1971年卒業で大先輩になります。大学広報誌(『Campus Now!』第3号,2005 10)に寄稿していただいたこともあり,勝手に親近感を持っています。

全体を通してのメッセージは「まず伝わってこそ文章」
以前に取り上げた池上 彰氏の『伝える力』(blog No.142)がジャーナリストからのメッセージなら,こちらは作家からの教示です。
編集コンセプトの要旨は ―― 日記などのように原則として自分が読むためのものは,自分にわかりさえすればいい。対して,ひとに読まれる文章を書く時の目的は,あなたは何を読み手に伝えたいのか,がちゃんと伝わること。わかる人だけ読んでください,というわけにはいかない。そして,できることならば読み手を同感させること。現実にはなかなかすべての人を同感させる文章は書けないものだが,とりあえず目標をそこに置いて書く ―― 読者にその「心構え」や「作法」や「コツ」や「裏技」を指南するための「文章教室」です

本書の中で,私が「やっぱり,そうか!」と再認識したのが,第二講の「とはいうものの接続詞」の章です。
「皆さんまず,大いにいろんな接続詞を使って文章を書いてみよう。するとその接続詞に導かれて,(中略)誤って使わない限り,論に乱れのない文章になる」(p.37)。
あれ,ジャーナリストの池上 彰氏とは違う教えだな・・・ところが,めくった次の頁にはこう続きます。「接続詞は論理構造を作ると私は言ったが,(中略)どうしてもこれがないと意味が伝わらない,というもの以外は,接続詞をすべて消してもらいたい。つまり,接続詞をどう使えばいい文章になるかの技は,頭の中では大いに意識しつつ,実際にはあまりつかわないこと,なのである」「要所要所に理解を導いてくれる接続詞が残っていればいいと思う」と。
「おや!」と思わせておいて「実はね・・・」という語り種も,清水氏の文章仕掛けなのでしょう。
その他にも,大人になると今さら聞けない「テンマル」や「〈です・ます〉と〈だ・である〉」など,ちょっと技アリの使い方を教えてくれます。

作者が「あとがき」で書いているように,本書は第一講〜第七講までが「文章を書く上での基本の整理」,第八講〜第十一講が「具体的なタイプ別文章(手紙・実用文・紀行文・随筆)の書き方」です。
一つの講義は約15頁,基本編(第一講〜第七講)だけをじっくり読むのもお勧めです。

『大人のための文章教室』(清水義範,講談社現代新書,2004年)720円
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番外編 24:『愛知教育大学 GUIDE BOOK 2012(大学案内)』 20:30
大学案内2012(3

毎年,この番外編に載せている勤務校の「大学案内」を今年も紹介します。例年と同じく6月末に完成していますので,先のオープンキャンパス等で既に多くの受験生や高校に渡っていると思います。
国立大学が法人化された2004年から担当してるので,かれこれ第8作目になります。

今回はページの随所に「キャンパス内で見られる植物」を配しました。
2年ほど前,OBの手記の中「母校は,都心のような便利な立地とはいえませんが,広大なキャンパスに緑が生い茂り,鳥のさえずりが聞こえる気持ちのよい環境でキャンパスライフを送ることができます」(2010年度版)の言葉にいたく感動した私は,以来,自然が豊かなキャンパスの良さは他にない魅力なんだ! と再確認しました。
また「平らな敷地に建物が並ぶ大学をイメージしていたところ,自然豊かな丘陵地のキャンパスに魅せられ」学内の名所を探してスケッチをされてきた村瀬康司さんの言葉も印象的です。村瀬さんのスケッチは,昨年度版に続き,今回も新作を見開きで掲載させてもらいました(p.70-71)。
以前は,私自身が気付いていなかったのですが,1限目の授業では,本当に鳥のさえずりが聞かれます。キャンパス内を散策すると,季節ごとに色々な花々に出会います。

本編である各専攻・コースの紹介については,来年度は組織も定員も変更がないのでメイン写真の差し替え程度でしか変化はつけませんでした。
『大学案内2012]の請求は,大学のWeb Site(http://www.aichi-edu.ac.jp)トップページにある「入試情報 > 資料請求」からどうぞ。無料(送料は有料)です。

私の所属する教員養成課程(美術)では,上記の案内とは別に,おもに受験生向けに独自のWeb Site(http://www.art-edu.jp)を開設しています。関心のある方は,ご覧ください。

『愛知教育大学 GUIDE BOOK 2012(大学案内)』(愛知教育大学 入試課,2011年)無料
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158:『ふかいことをおもしろく』 15:24
「ふかいことをおもしろく」

「むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,ゆかいなことをいっそうゆかいに」とは,井上ひさし氏(1934〜2010年)の名言ですが,この一節を題名にした自伝です。

ずっと前に何かの本で読んだ記憶もありますが,1950年代後半,ラジオドラマの懸賞応募に書くのが楽しかった井上氏にとってのライバルは,どうしてもかなわなかった藤本義一氏であったことが,当書でも語られています。その後,お二人とも直木賞を受賞しました。
多くの懸賞応募が起用のきっかけとなった井上氏のレギュラー番組といえば,私が幼少期に見ていたNHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』(1964〜1969年),情景や台詞まで今でも覚えているほど強烈な印象です。若き井上氏が,この人形劇の台本(共作)を書いていたのを知ったのは,随分と後になってからです。

井上氏のふるさとは山形県川西町であることが冒頭に書かれていますが,父親が亡き後に母親が移り住んだのが岩手県釜石市で,井上青年はこの地で最初の就職をします。「海のそばで,街は鉄と魚ですごく賑わっていて,映画館もたくさんあるし,芝居も見られて,母もいる。釜石は,僕には思いのほか居心地がよかったのかもしれません」(p.57 )。

岩手県釜石といえば・・・今年3月11日に東北大震災で大きな被害を受けた地域です。
井上ひさし氏は2010年4月に永眠しましたが,本書は2007年9月20日に放送されたNHK BSハイビジョン番組をもとに書籍化,亡くなる2年半前のメッセージです。ところが,巻末には,震災から発生した原発事故への人間の反省ともとれる「100年後の皆さんへ,僕からのメッセージ」が付いています(「続きを読む」に写真)。

「(前略)できたら100年後の皆さんに,とてもいい地球をお渡しできるように,100年前の我々も必死で頑張ります。どうぞお幸せに。井上ひさし」(p.117)

『ふかいことをおもしろく』(井上ひさし,PHP研究所,2011年)1100円
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157:『「図工・美術授業にカメラ」始めよう,カメラの授業!』 12:00
始めよう,カメラの授業!

私の勤務先は教員養成系の大学ですが,在学生は「絵を描くのが苦手」なので『図工・美術』は大嫌い! な教員志望者が半数以上はいるようです。多くは小学校の教員を希望しています。
「絵を描く」のは制作の一部分に過ぎませんし,自らの制作(making)と,教えること(management)を同じに捉えては早とちりです。

そんなことを考えている中で見つけたのが「これ一冊で図工・美術が好きになる」と見出しの付いた『「図工・美術授業にカメラ」始めよう,カメラの授業!』です。

全120ページありますが,指導案は冒頭の8ページに写真仕立てで視覚的に詰まっています(下左写真)。
「図工・美術授業にカメラ」の指導指針は「子どもたちが,図工・美術授業で造形表現した作品を,作品のよさや,周りの風景との関係の面白さなどを考えながら写真を撮影する」(p.4),カメラとの立体利用です。
指導ステップは ――
1. 造形物を作る(撮影をイメージしながら,いつもより真剣になる)
2. ロケハンする(撮影場所の下見,光や影の影響,バックの雰囲気を探す)
3. 写真を撮る(簡単なカメラの機能を教わる。約1分,これで充分)
4. 鑑賞する(これが大事だ。プレゼンテーション能力を高める)
5. 文章を書く(具体的に一連の流れを書く。写真を見ると書ける)
という流れです。

p.17〜84は全て「第一回 全国学校図工・美術写真公募展」の作品集(下右写真)となっており,具体的に「図工・美術授業にカメラ」の展開例が掴めると思います。p.85以降は協賛企業の広告で,カメラのブランド紹介となっています。

今や,小学校でもデジタルカメラを導入している学校は多いようです。「図工・美術授業にカメラ」を使うことで,作った作品を更に昇華でき,新たな表現の楽しみが増えそうです。
小中学校での図工・美術教育を起点としての「ポートフォリオ教育」への足がかりにもなっていく期待感があります。

始めよう,カメラの授業(指導案)始めよう,カメラの授業(作品集
教師向け指導案のページ(左),子どもの作品例(右) クリック拡大可

『「図工・美術授業にカメラ」始めよう,カメラの授業!』
(社団法人日本広告写真家協会,ピエ・ブックス,2010年)1575円
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番外編 23:ブログの原稿整理 18:59
ブログ校正過去のブログ記事をプリントして校正(クリック拡大可)

当ブログ,後になって読み返すと,自分でも意味が通じない表現がありました。冗長な文章の箇所は直したいな,と思いながらも長らく手つかずの状態でした。とりあえず2〜3話だけでも調整しようか! と着手した途端,やっぱり一挙に片付けたくなりました。2週間ほどかけて自分にツッコミを入れ「校正」をしました。

全編を通し気になっていたのは「接続詞」と「テニヲハ」「こそあど」の使い方です。
「接続詞」に関しては,池上 彰氏も『伝える力』(blog No.142)の中で「文章力を高めようと思って,自分に課したことがあります。それは,接続詞をなるべく使わないことです。『そしてそれからの類です。これらの接続詞が多い文章は,幼稚になりがちです」(p.170)とアドバイスを送っています。
改めて読むと(もはや他人の文章の様相)意味不明な指示語(これ・それ・あれ・どれ)文語体表現(および・おいて・いわゆる・あるいは……)が多いことに驚きでした。改行時に「さて」や「ところで」の安易な多用も私の文章の癖のようです。
中には「企画に増幅を持たせる」といった表現や「独立にバラ色を描く」など
冷静に考えると奇妙な文章もいくつかありました。正しくは「企画を増幅させる」「独立をバラ色に描く」ですよね。あ! はずかしい。

普段の読書を
校正者の視点で読むとあれっ! 著名な方の文章でも,接続詞がやたら多く一文がとても長かったり,「という(といった)」「その(この)ような」「行う」の多発が見られるではありませんか! 
自分ツッコミの今回の作業は170篇余り(番外編を含む)とはいえ文章修行の一つにはなったかななどと思っています。もともと自分への読書記録ノートで始めたブログですが,せっかくのミニメディアなので品質を意識するようになってきました。私が読書ブログを続けているのは『50代にもよくわかる「ブログ」入門』(blog No.40の「追伸」欄に記載)にもある気構えです。
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156:『イラストで学べる著作権(学校編)』 19:49
「イラストで学べる著作権」

このところ,講義で「著作権」を話すことが多くなってきました。
約20問ほどのクイズに回答してもらい,長い解説をしています。大学1年生が対象だと「え〜,私たちの便利さが失われる!」と,自己の立ち位置での反応ですが,4年生にもなると「著作権者の立場で考えないといけないですね」となってきます。著作権者の立場を守る ―― だからこその「著作権」です。

「学校では『著作権』は適用の圏外」と勝手に解釈している現場教師や,教師の卵(教育学部の学生)が多いのも現実です。
例えば「市販のワークブックなどの教材を1冊だけ買って,クラス全員にコピーして配る」のは,買ってもらうことを前提に作られている訳ですから,コピー配付は著作権者の売上げを損ねています(p.29)。学校での制限を緩和したのが第35条ですが「当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りではない」が示す但し書きの違反となるのです。それにしても法律は「及び」「並びに」「照らし」と,難解な文章表現ですね。
逆に,内容を正しく理解していないために過剰に反応し利用者としての権利を自ら縮めているケースもあるようです。「学校の運動会でプラカードに人気のキャラクターを描きたい」場合,授業の一環としての使用と見なされていますから,第35条の適用を受けます(p.41)。35条は「学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担当する者は,その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には,必要と認められる限度において,公表された著作物を複製することができる」。

著作権を啓蒙する機関や協会が発信するケーススタディ付の解釈書で学ばないと,身近な法律ですが理解が難しく萎縮してしまうか拡大解釈をしてしまいます。
このブログでは,過去にも著作権の本を紹介(blog No.02blog No.61)してきました。忙しい現場の先生がすばやく読めるスタイルの本が無いかな? と思っていた時に見つけたのが,小中学生と先生との問答をイラストを使って解説した本書です。1日に1項目の見開き2ページ(じっくり読んで10分)を読み進めたとして,3週間で読了です。小中学生をも対象としていますので,具体的で簡潔です。忙しい先生にもお奨めです。

閑話休題,トップの書籍写真に「ミッフィー」のようでもあり「キティ」のような人形が写っています。紹介は「続きを読む」で会いましょう。

『イラストで学べる著作権(学校編)』(財団法人 著作権情報センター,汐文社,2004年)1800円
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番外編22:『特別展 ウメサオ タダオ展』 23:00
「ウメサオタダオ展」入場

私が高校生だった1970年代後半の頃,受験雑誌の読者投稿欄がきっかけで読んだのが『知的生産の技術』(梅棹忠夫,1969年,岩波新書)でした(blog No.01)。多くの人に知的刺激を与え続けてきた名著です。『知的生産の技術』に貫かれる「情報」の理念は,梅棹氏の尽力で国立民族学博物館という巨大情報装置として具現化しています。1977年のことで,場所は日本万国博覧会(1970年)跡地の千里公園内です。梅棹氏は,長らく初代館長を勤めました。昨年2010年,90歳の生涯を引退されました。

梅棹氏の膨大な研究活動の舞台裏(メイキング)を支えてきた「知的生産の技術」の大披露宴が,同博物館で開催中の『ウメサオ タダオ展』(〜6月14日)です。何と,芸術家の展覧会ではなく,梅棹氏は学者なのです。
モノが重要視された工業化社会の時代に「情報」という概念を社会に一般化させた人で,今回の展覧会では「知的先覚者の軌跡」とサブタイトルが付いています。

この名著に刺激を受けた読者を中心に「知的生産の技術・研究会」という組織も作られているほどです。知研の勉強会として,去る5月8日に総勢10名余ながらも『ウメサオ タダオ展』見学会が開かれました。何と幸運なことに,勉強会でのガイド役長年にわたり民博で梅棹氏の知的生産活動を支えてこられた三原喜久子 秘書でした。「太く長い人生でした」と秘書に語らしめる人間活動は,若い時の探検・文化研究,学者としては研究の在り方の啓蒙,壮年は博物館構想・館長,晩年は「月刊・梅棹」と呼ばれるほどの著作活動と,一人の人間のフィールドとは思えないほど超越した広さと深さです。

「情報は共有されるべきだ」という梅棹氏の信念を反映してか,会場は「写真撮影可」(会場の様子は「続きを読む>追伸」欄にアップ)。入場者の多くは,梅棹先生の思考回路の「仕組み化」や「見える化」(今回の『図録』の中で,ジャーナリストの山根一眞氏は「脳内作業の可視化」と表現。p.96)を撮影していました。自己の仕事の励みにするのだと思います。
私も本の中でイメージしていた「書き込みのあるB6判カード」「記録を構想した『こざね』法」「本人が整理した記録写真アルバム」「生原稿を『製本』した保存用の私家版」などのホンモノを写真で記録してきました。

今回の展覧会も『図録』を買い求めましたが,会場展示の臨場感は,その比ではありません。あと一度,足を運びたいところですが,大阪は近くはないが・・・。

特別展『ウメサオ タダオ展』(観覧料は大人420円,高校・大学生250円)
図録『梅棹忠夫 ―― 知的先覚者の軌跡』(国立民族学博物館,2011年)1890円

※ 展覧会の案内は,当(blog No.154)の[追伸]欄にアップしています。
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