164:『ピュリツァー賞受賞写真全記録』 |
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大学生協の書店で見つけた時,これに載っているはずだ! とページをめくりました。
ありました「サイゴンでの処刑」(撮影:エドワード・アダムス,1969年)です。1970年代に教育を受けた私たちの世代が,中学・高校時に何度も目にし,世界にセンセーショナルを巻き起こした写真です。

「まさか撃つとは思わなかった。(中略)ところが違った。男はホルスターからピストルを抜いてベトコンの頭に突きつけると,こめかみに1発撃ち込んだ。その瞬間,私はシャッターを切った」(p.79-80)。
(→ 記録ムービー)
メディア・リテラシーと表現をテーマにした講義の中で尋ねると,大学生のほとんどが「この写真は見たことがない」と ―― 私たち世代は何度も見ていたとしても,引き継がないことには,やがて「なかった歴史」となってしまいます 。
今年になって,講義の中で何度となく,各ページの写真を紹介しました。
ピュリツァー賞受賞写真は,戦場や弾圧や殺戮シーンが多く,視覚的にも辛過ぎます。さらに掲載写真の脇に小さな文字で組まれた「撮影データ」まで目を向けると,複雑な気持ちになります。「使用カメラ」項目の多くは日本製,その性能の良さが認められたのはベトナム戦争での成果だったと言われています。
1942年の写真から載っていますが,1960年代中頃からはライカを凌ぎニコンとキャノンのカメラが中心です。そんな歴史も窺い知ることができます。
この「サイゴンでの処刑」も,カメラマンの良心が問われた有名な「ハゲワシと少女」(1994年,スーダン内線)も,共にニコンのカメラが使われています。
本に詰まっているそれぞれの写真 ―― カメラマンは,どういう気持ちで撮影したのか。
1)レンズの前の惨状を多くの人に知ってもらうため?(正論)
2)このシャッターチャンスをものにして有名になるため?(邪道)
3)名を馳せば,ますます写真のメッセージは広く世に伝わる!(邪道だろうが,正論は強力となる)
4)演出はあるのか? あるとしたら何のため?(演出と作品性)
5)演出があったとしても(1)の情況は伝わる(「作品」である映画や小説でも感動のメッセージがある)
「報道写真」って,何だろう? ―― この命題を考えさせられる書籍です。少なくとも晴れやかになる本ではありません。
『ピュリツァー賞受賞写真全記録』
(Hal Buell 著,河野純治 訳,日経ナショナル ジオグラフィック社,2011年)3800円
164:『ピュリツァー賞受賞写真全記録』












